大阪府警南署は、ミナミ・道頓堀の「グリ下」と呼ばれる場所の周辺に防犯カメラを設置し、3月から運用を始める。コロナ禍以降、SNSを通じて少年少女が集まり、飲酒やけんかなどのトラブルのほか、犯罪に巻き込まれるケースも起きているためで、若者らの安全を守る狙いがある。
「グリ下」は、道頓堀の観光名所であるグリコの看板の下にある戎橋周辺の遊歩道を指す。2021年夏頃から、SNSに「グリ下」という言葉が頻繁に投稿され、連日多くの少年少女が集まるようになった。当時は、飲食店が時短営業や休業をしていた時期で、行き場を失った若者らの居場所として自然発生し、その後、定着したとみられる。
同署によると、グリ下で知り合った若者から飲酒やたばこを勧められたり、けんかになったりするトラブルが起きている。昨年6月にはグリ下で知り合った女子中学生にみだらな行為をしたとして、ホストの男が府青少年健全育成条例違反容疑で逮捕される事件もあった。
同署はグリ下周辺の巡回を強化し、補導した未成年者は、家庭に連絡したり、児童相談所に通告したりしてきた。しかし、グリ下に集まる少年少女は後を絶たず、トラブルが起きた際に迅速に対応できるよう、遊歩道の様子がわかる位置にカメラを2台設置する。
グリ下に集まる若者たちは家庭や学校で悩みを抱えているケースも多い。17日夜に東京から訪れた男性(20)は「ほかに行く場所がない子もおり、カメラが設置されてもみんな集まると思う。何かあった時に、警察に頼れるならいい」と話した。
グリ下に集まる若者らの支援をしている田村健一弁護士は「防犯カメラだけでは問題の根本的な解決にならない。居場所を失った若者たちの受け皿をどう作るかが重要だ」と話している。