上野動物園(東京都台東区)のジャイアントパンダ、シャンシャン(雌、5歳)は21日、中国に返還されるため、生まれ育った同園を離れ、中国・四川省のパンダ保護研究センターに向けて出発した。シャンシャンを見守り続けてきた関係者からは惜別の声や、種の保存への貢献に期待する声が上がった。
同園の地元、上野中通商店街振興組合の茅野雅弘・副理事長(63)は「娘を嫁に出す気持ち」とつぶやいた。2008年にリンリンが死んでから、上野にしばらくパンダはいなかった。地元では上野に再びパンダが来園するよう、子供たちの声を集めたり陳情を繰り返したりして、11年の父リーリー、母シンシンの受け入れにつながった。その2頭から生まれ育ったシャンシャンを、茅野さんは娘のように感じていたという。茅野さんは「シャンシャンは愛嬌(あいきょう)があって、シンシンに『ひざカックン』をしたり、木から転げ落ちたり、かわいさは格別。当然、さみしさもあるけれど、送り出せることに喜びも感じている」と複雑な思いを口にした。
同園に毎日通い、パンダの写真を撮影してブログ「毎日パンダ」に掲載している、さいたま市の会社員、高氏貴博さん(44)は「いよいよこの日が来てしまい、さみしさを実感している」としんみり。1歳半で「独り立ち」するまでは、母シンシンが何をしてもくっついて歩く姿が印象的だったといい、「甘えん坊だった」と振り返った。
シャンシャンは、同園で初めて自然交配で生まれ育ったパンダ。前園長で日本パンダ保護協会会長の土居利光さん(71)は「待望の子どもだった。(誕生から)5年8カ月、多くの方が見守ってきて、親しみも持ってもらったと思う。パンダの中でもシャンシャンは人気者だった。種の保存に貢献することを期待したい」と話した。【柳澤一男】