ジョー・バイデン米大統領は20日、ウクライナの首都キーウへの「電撃訪問」を果たした。ウラジーミル・プーチン大統領率いるロシアが残虐非道なウクライナ侵攻を始めてから24日で1年となるのを前に、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領との首脳会談に臨み、ウクライナを支える自由主義諸国の結束をアピールした。岸田文雄首相も今年のG7(先進7カ国)議長国の首脳として、ウクライナ訪問を検討している。ただ、国会対応や情報保全など、実現には、いくつものハードルが存在している。
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「バイデン大統領がウクライナを電撃訪問 本格的侵攻開始後初」(米CNN電子版)
世界を驚かせたバイデン氏によるウクライナ訪問を、欧米メディアは大々的に伝えた。日本の新聞各紙も一面で報じた。
バイデン氏は19日未明にワシントンを出発し、ポーランドから列車で20日にキーウに入った。滞在時間は5時間程度で、同日中にキーウを離れたという。米政府は秘密裏かつ周到に、今回の計画を実施したようだ。
G7各国の首脳は、国連安全保障理事会の常任理事国でありながら侵略戦争を始めたロシアの蛮行を非難し、民主主義という価値観を共有するウクライナを支持・支援するため、次々にキーウを訪問している。
英国のボリス・ジョンソン首相(当時)は昨年4月9日、G7の首脳として初めてキーウを訪問した。5月8日には、カナダのジャスティン・トルドー首相が、6月16日には、フランスのエマニュエル・マクロン大統領と、ドイツのオラフ・ショルツ首相、イタリアのマリオ・ドラギ首相(当時)が続いた。いずれもゼレンスキー氏との首脳会談が行われた。
今回のバイデン氏の電撃訪問で、G7では唯一、岸田首相だけがウクライナを訪れていない首脳となった。
岸田首相も先月6日、ゼレンスキー氏との電話首脳会談で、招請を受けている。会談後には「現時点で私のウクライナ訪問は何ら決まっていないが、諸般の状況も踏まえて検討していきたい」と記者団に語った。
今年5月には、岸田首相の地元・広島でG7首脳会議が予定されている。ウクライナ問題が主要議題となるため、岸田首相はそれまでの訪問に強い意欲を示してきた。
ただ、実現には、クリアすべき課題がいくつもある。
第1は、国会対応だ。ウクライナ訪問には、ポーランド経由による陸路が想定され、日本からは計3日間ほどの出張期間が必要となる。岸田首相は3月下旬まで、2023年度予算案の審議が続く。土日をはさんだ3日間を捻出するのは簡単ではない。