「命と人権を守れ」 入管法改正案に9都市で抗議行動

政府が今国会に提出を予定する出入国管理及び難民認定法(入管法)改正案に対し、集会やデモなどで廃案を求める「全国一斉アクション」が23日、東京、大阪、名古屋など9都市で行われた。2021年3月6日に名古屋出入国在留管理局で収容中のスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)が死亡してから間もなく2年。三回忌を前に、難民認定申請者の送還を促進する改正案に抗議の声を上げた。
「入管の民族差別・人権侵害と闘う全国市民連合」が主催。東京では約350人(主催者発表)が上野公園から行進した。在日外国人やその支援者、一般市民が参加したほか、性的マイノリティーの人たちも連帯し「入管は命と人権を守れ」「人種差別に反対する」などと書かれたプラカードを掲げ「入管法改悪でなく、在留資格を」などと訴えた。
ウィシュマさんの妹ポールニマさん(28)も姉の遺影を抱いて参加。行進後の集会で「入管は姉の死の真相を明らかにし、責任を認めてほしい。収容や送還に関する法案を提出する資格がないと思う」などと語った。
東京都の派遣社員、遠藤明美さん(45)は「入管収容中に亡くなった人も多く、入管は信用できない」などと話した。クルド人男性と結婚8年になるが、いまだ夫に在留資格が与えられないという嶋津まゆみさん(53)は「日本語ができ、文化も理解している人には在留資格を与えた方が社会が豊かになるのでは」と訴えた。
出入国在留管理庁は今月15日、不法滞在の外国人が入管施設で長期収容されている問題の解消に向け、入管法改正案の概要を自民党法務部会に示し、22日に了承された。現行法では不法滞在者は原則として入管施設に収容され、国外退去処分が決まれば自ら帰国するか、強制的に送還される。
だが、現行ルールでは難民認定申請中は送還されないことから送還回避目的で申請を繰り返すケースもあるといい、改正案は送還が停止される難民申請を原則2回までに制限。送還中に暴れるなどして送還を妨害した場合は、刑事罰を科せる制度を新設するとしている。
こうした動きに対し、東京弁護士会やNPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」(移住連)は、迫害の危険がある場所への送還を禁じた難民条約の規定「ノン・ルフールマン原則」に反するなどとして批判している。
改正案は21年の通常国会に提出されたが、十分な医療を受けられずウィシュマさんが死亡し、入管行政への批判の高まりを受けて廃案に追い込まれた。【和田浩明】