福岡空港(福岡市)で、保安検査場前に連日、利用客の長い列ができている。その背景には、昨年10月の水際対策の大幅緩和などで、急激に回復している航空需要に対し、コロナ禍で離職した保安検査員の補充が追いついていないことが一因にあるようだ。(今泉遼)
「電子機器類は手荷物の外にお出しください」「優先レーンをご案内いたします」――。今月中旬、福岡空港を訪ねると、国内線ターミナルの検査場前で長蛇の列を作る利用客に対し、航空会社の職員が声を張り上げていた。
群馬県から出張で訪れ、羽田空港経由で帰路に就く予定の会社員(44)は「羽田より長い列にびっくりした。早めに来て良かった」と胸をなで下ろした。
国際線ターミナルでも国内線と同様に長い列ができていたが、保安検査場の6レーンのうち3レーンしか使用されていなかった。韓国・ 釜山 (プサン)に向かう愛媛県の高校3年生(18)は「外国人観光客が多く、相当混んでいる。飛行機の出発が遅れないよう、スムーズな検査に協力したい」と話した。
国土交通省の統計では、福岡空港の乗降客数は感染拡大の影響で2020年5月に約14万人に落ち込んだが、水際対策の緩和や政府の観光支援策「全国旅行支援」などの効果もあり、22年12月には約190万人まで回復した。
一方、同空港の保安検査業務を請け負っている警備会社「にしけい」(福岡市)によると、20年4月と比較して4割以上少ない約200人で業務を行っている。採用しても必要な資格を取得するのに時間がかかることもあり、すぐには人員を増やせないのが現状だという。
人材確保に向けて、空港を運営する福岡国際空港(FIAC)は1月下旬、空港内で合同企業説明会を開催。3月18日にも、既卒者や経験者に加え、24年の新卒者も対象にした説明会を空港内で再度開く予定で、にしけいなど15社が出展する。今月28日に採用専門のウェブサイトも開設し、16社の情報を掲載する。
FIAC広報課の小林智子課長は、検査に時間がかかる別の要因として、久しぶりに空港を利用し、検査を受ける客が中身を1本ずつ確認する必要があるペットボトル飲料を何本も持ち込もうとしたり、冬物のコートやブーツの着脱に手間取ったりしている点を指摘。「中国便など国際線の再開が進めば、さらなる混雑も予想される。保安検査員は知識や経験が必要な仕事なので、長く働いてもらえる人材の確保を急ぎたい」と力を込める。