全国を震撼(しんかん)させた広域強盗事件で、「ルフィ」と名乗る首謀者らによる犯行の手口や犯罪組織は20年以上前から巧妙に仕組まれてきたものだった。夕刊フジで「格闘技裏通信」を連載するジャーナリストで、長年にわたり海外の犯罪組織を追ってきた片岡亮氏がフィリピンに渡り、「ルフィのルーツ」を追った。
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ルフィと呼ばれる首謀者らが、フィリピンの入管施設から日本に移されて逮捕されたが、犯罪組織の全貌が明らかになるのはまだまだ先のことだろう。
なにしろ暴力団のように明確な組織化がされておらず、「闇バイト」と呼ばれるインターネットを介したメンバー募集もあり、全体像がつかみにくい。
そのルーツは20年以上前に遡(さかのぼ)る。「振り込め詐欺」と呼ばれた特殊詐欺の発生件数が全国で万単位に広がった。大勢が役割分担をする「劇団型犯罪」の手口は架空請求や還付金詐欺などに広がり、犯行グループはメンバーを偽名で呼び合い、一部逮捕者が出ても首謀者を逃す仕組みを作るなど巧妙化していた。主犯格が海外から指示を出すのも15年ほど前から増え、タイ・パタヤや中国・吉林省、ナイジェリアなどを拠点としたグループが摘発されていた。
これが強盗団と化したわけだが、筆者は長く海外拠点の犯罪組織を追っていたことで、くしくも昨年10月にフィリピン・マニラで接触した日本人の男が「ルフィ」の一団ともつながっていたことが分かった。
男は直接、日本での強盗や詐欺などには関与しておらず、グループにも属さないで、偽造パスポートを作ったり、身柄を日本から逃したりするなどの裏稼業をしてきたという。
筆者が男と知り合ったきっかけは、日本での事件で国際指名手配された人物に関して、「フィリピンにいる日本人が逃亡を手助けした可能性がある」との情報を得たことだった。
数年前に男とフィリピン中部のボホール島で初接触した際、「仕事の中身については言えない」としつつも「組織的な犯罪者の大物はみんな直接、俺のところには来ない」と明かしていた。
そして、昨年10月に別件での情報を得るために男と再会したが、その際に「フィリピンの刑務所に日本人がたくさんいて、そいつらから依頼がある」と言っていた。後にそれがルフィ関連だと分かったのである。
男は以前、「依頼してくる日本人は、多くが身分証を偽造してフィリピン人になって逃げたいってヤツだけど、中には日本人の別人と入れ替わる連中もいる」と言っており、フィリピンには別人になった日本人がいるわけだ。それが犯罪の首謀者となれば、捜査は撹乱(かくらん)される。
ルフィの正体がいまだ誰かハッキリしていないのもそのためだろうか。