岸田派の西田昭二・国土交通大臣政務官(53)が、統一地方選を巡って特定の候補者への投票を依頼したと受け取れる文書を配布していた疑いがあることが、「 週刊文春 」の取材でわかった。文書を入手した。公職選挙法違反(事前運動)の疑いがあり、過去には同様のケースで公民権停止となり、議員辞職に至った例もある。
地元住民に対し、候補者へ投票を依頼する文書を送付
西田氏は七尾市議、石川県議を経て、2017年の衆院選で石川3区から初当選を果たした。現在2期目。昨年8月の内閣改造で、国土交通大臣政務官兼復興大臣政務官兼内閣府大臣政務官に就任している。
「2021年の衆院選では、岸田文雄首相が石川県入りした際に『今や私の側近として活躍』と持ち上げていた。西田氏は中高大と相撲部に所属。公家集団の岸田派にあって、“叩き上げ”の議員です」(政治部記者)
その西田氏は2月上旬、〈自由民主党石川県第三選挙区支部長 衆議院議員 西田昭二〉名で地元住民に対し、以下のような文書を送付していた。
送った文書には土本氏の後援会入会案内も
〈本年三月に行われます石川県議会議員選挙に於いて中能登町選挙区は、土本みのる中能登町議会議員を最適任者と認め公認し、強力に推薦いたします〉
〈土本みのるさんに一層のご支援をどうぞよろしくお願い申し上げます〉
この文書には、土本氏の後援会入会案内も同封されていた。
土本氏は、3月31日告示・4月9日投開票の石川県議選に鹿島郡選挙区(定数1=中能登町)から出馬の意向を表明している。前回の県議選は大激戦で、僅か26票差で野党が議席を奪取。保守王国の石川県で議席を獲得できなかった唯一の選挙区だった。
「それゆえ、地元の代議士である西田氏も力が入っているのです」(同前)
この文書を受け取った50代女性が証言する。
「土本さんに一票入れて下さいという意味だと受け止めましたよ。自民党議員とは付き合いがないので、なぜ自分なのか? 住所はどこで知ったのか? と不思議でした」
公選法が禁じる事前運動に当たる疑いが強い
石川県では2013年、衆院選の公示前に候補者へ投票を依頼するはがきを送ったとして、金沢市議(当時)が公選法違反(事前運動)で書類送検され、罰金30万円と公民権停止2年の略式命令を受け、議員辞職した。市議は当時、「後援会入会を呼びかける文書で、投票依頼を意図したものではない」などと読売新聞の取材に述べていたが、司法は違法性があると見なした形だ。
この市議の代理人弁護士は次のように語る。
「(西田氏の文書と市議の文書は)趣旨がほぼ同じです。文面を総合すると、『土本さんに投票を頼むよ』という話になっている。公選法違反(事前運動)に当たるでしょう」
公選法に詳しい日本大学名誉教授の岩井奉信氏(政治学)も、西田氏が送付した文書について以下のように指摘する。
「手紙は後援会活動を装ってはいますが、選挙を特定した上で特定の候補者への投票を呼び掛けており、事実上の投票依頼と言える。公選法が禁じる事前運動に当たる疑いが強い」
西田事務所側の回答は
西田事務所に見解を求めたところ、書面で以下のように回答した。
「ご質問の文書につきましては、自由民主党石川県支部連合会における公認決定の事実を党本部から連絡した文書に過ぎず、選挙運動に係る文書ではありません」
河井事件の教訓から高い透明性を掲げたはずの岸田内閣では、辞任した寺田稔前総務相をはじめ、首相と近い議員や閣僚らに選挙違反を巡る疑惑が相次いできた。西田政務官の疑惑についても、内閣としてどのような対応を取るのか、注目される。
3月1日(水)12時配信の「 週刊文春 電子版 」および3月2日(木)発売の「週刊文春」では、西田氏が送付した文書のより詳しい文言、文書を受け取った別の地元住民の証言などについても報じている。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年3月9日号)