《右派論客に過激発言》「Twitterで懲戒処分されたのは『桜ういろう』だけじゃなかった!」共同通信社で相次ぐ“記者ツイート問題”の実態とは から続く
Twitterで過激な発言を繰り返していた「桜ういろう」の正体が共同通信社の職員だと特定されたのは2月中旬ごろ。同時期に、同社の別の記者Y氏がSNSの不適切な利用で懲戒処分を受けていたことが発覚した。
2月17日、社内イントラネットに「懲戒処分の件」と題する文書が掲載された。
何度も“SNSトラブル”の注意を受けていたのに…
〈昨年12月、職員がSNSのツイッターに開設した個人アカウントから、外部の1個人を根拠もなく誹謗中傷する内容を投稿したとして、社は職員就業規則第73条に基づき懲戒委員会を設置。懲戒委は重大な問題行為だと結論付け、答申を受けた水谷亨社長はこの職員をけん責とする懲戒処分を決定しました。
職員のツイッターのプロフィール欄に共同通信の所属であることは記載されていませんでしたが、ツイートを読めば共同の職員であることは容易に分かる状態でした。この職員は過去にも複数回、SNSが関係したトラブルで口頭注意を受け、適正利用を約束していました。
職員就業規則第73条は、職員が社の「ソーシャルメディアの利用に関する指針」に反する利用をしたときは懲戒処分の対象になると規定しています。職員の皆さんは指針や職員就業規則を踏まえ、公私に関わりなくSNSの適正利用に努めてください〉
口頭注意を受けていたにも関わらず、SNSが関係するトラブルを繰り返していたY氏。懲戒処分にまで至ったツイートの内容は何だったのだろうか。
関係者が明かす。
脈絡のない相手に『政府のワンコ(犬の絵文字)』
「Y氏は昨年12月末に、公的機関の職員の実名を挙げた上で『政府のワンコ(犬の絵文字)』などとTwitterに投稿していました。この職員のツイートに返信した形ではなく、別のアカウントのツイートに反応する形で悪意ある発言をしたのです」
「桜ういろう」は右派論客らの発言内容に対して過激な返信を送っていたが、Y氏は特に脈絡もなく相手を罵ったようだ。
関係者によると、誹謗中傷を受けた職員は弁護士に相談後、共同通信社に被害を説明。事態を重くみた同社はY氏に聞き取りをした上で、すぐにアカウントを削除させたという。
その後、Y氏は職員に謝罪のメールを送り、誹謗中傷した理由を次のように説明した。
〈私が年内最終勤務を終え、飲酒中にたまたまみかけたフォロワーのツイートに反応し、(中略)とっさにツイートしてしまいました。深く反省し、先ほど削除しました。
二度とこのようなツイートをAさまに対してのみならず、他者さまへもしないことを固く誓い、改めておわび申し上げます。たいへん申し訳ございませんでした〉
誹謗中傷を受けたAさんは次のように話す。
「SNS上で特定個人のアカウントに対し一方的に誹謗中傷することが深刻な社会問題となっている中、記者を名乗るアカウントが会ったこともない相手に執拗に絡み、悪意のあるツイートを繰り返すことは残念です」
ツイートの投稿時刻は、午前3時2分。誹謗中傷をしていい理由にはならないが、未明にわたる飲酒で気が大きくなっていた可能性は否めない。
「女性記者にFAXでラブレター、お中元にはアレを…」
Y氏は一体どういう人物なのだろうか。共同通信社の記者が明かす。
「Y氏は2018年4月に中途で共同通信社に入社しました。前職では女子校の教員をしており、歴史を教えていたそうです。今は関西地方で記者をしています」
現在は削除されてしまったが、Y氏のTwitterアカウントには「前職は女子校教員(歴史)」との記載があった。
そんなY氏だが、SNS以外でもトラブルを起こしていたという。前出の記者が続ける。
「3年ほど前の話ですが、Y氏は別の支局に勤務する同期の女性記者に好意を持ったのか、ラブレターを複数回、支局のファックスに送信したことがあったようです。加えて、お中元としてカルピスの原液を送りつけたことが話題にのぼったこともあります。このころから、彼の“粘着性”が記者たちの間では問題視されていました」
SNSの不適切な利用について何度も口頭注意を受けていながらも、懲戒処分を受けることになったわけだが、これもY氏の粘着性によるものなのだろうか。
別の共同通信社記者がY氏の“ある習性”について明かす。
メール末尾に“モールス信号”で謎メッセージ
「メール末尾に名前や所属、電話番号を記す署名欄があると思うのですが、Y氏はそこに“モールス信号”でメッセージを載せていたことがありました。不自然な記号の配列に違和感を持った記者が調べたところ、『ドンファンは俺が抜く』という文章になったとか……」
Y氏は当時、和歌山支局で勤務しており、同県の資産家で「紀州のドン・ファン」と呼ばれた男性が殺害された事件への意気込みを記していたとみられる。
モールス信号とは、短点(・)と長点(―)、区切り(空白)を使う文字コードのことだが、Y氏はこれらを組み合わせて“暗号メッセージ”を残しているというのだ。
「メールの送信先によってメッセージを変えているというわけではないようです。定期的に内容を更新しているようですが、実際のところはよくわかりません」(同前)
そもそも、記号の配列が偶然にもモールス信号で意味を成してしまったのかもしれない。だが、Twitterで誹謗中傷したことについて謝罪した前出のメール末尾にも、不自然な記号が羅列されていたことがわかった。
▲▼△▲▲▼▲△▼▲▲▲△▲▲△▲▼▲▼▲△▼▲▼▲▲△▼▼▼△▲▼△▲▼▲△
Y氏の署名
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「▲」「▼」「△」をそれぞれモールス信号の短点と長点、空白に置き換えると、次のような文章になった。
〈いちばんきれいな いろてなんだろう(一番きれいな色ってなんだろう)〉
Mr. Childrenの楽曲「GIFT」の一節だとみられるが、その真意は定かではない。これもまた単なる偶然なのかもしれないが――。
事実を確認すべく、Y氏本人に電話をかけた。
「(モールス記号を)解読した人に聞けばいい」
Twitterの投稿で懲戒処分を受けかどうかについて尋ねたところ、「事実かどうかは本社に問い合わせていただければと思うんですが、私からはちょっとお答えすることはできないです」とのことだった。
同期の女性に対する行動についてYは、「いろいろと話がおもしろおかしくなっていることもありますし、とにかくお答えすることはできません」とした。
一方で、メール末尾の署名欄に意図的にモールス信号でメッセージを記しているのか質問したところ、Y氏は次のように答えた。
「どちらから聞いてきたのか分からないですし、どういう意図でそれを聞いているのか分からなくて困っているんですけど……。まあ、それは解読した人に聞けばいいんじゃないですかね。私から言う事は特にないです」
社内外の人に送信するメール、ましてや謝罪相手にモールス信号のメッセージを残しているとは驚きだ。
〈一番きれいな色ってなんだろう〉
Y氏にとってそれは、反省の色だろう。
(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))