文部科学省の教科書検定に不信感が募っている。検定で合格し、2022年度から全国の高校で使われていた教科書会社最大手「東京書籍」の地図の教科書に、何と約1200カ所もの大量訂正が行われていたのだ。一方、「新しい歴史教科書をつくる会」が主導する「自由社」の歴史教科書には19年度、計405件の検定意見が付けられ「一発不合格」になっていた。日本の将来を担う子供たちが使う教科書は大丈夫なのか。文科省は「検定手続き自体は適切に行われた」と主張しているが、ダブルスタンダード(二重基準)にも見える。国会でも「検定の意味が問われる」と取り上げられた。
「石川県の松任という土地(の所在)が『富山県』になっていたり、チリの首都サンティアゴが『アルゼンチン』になっていた。見開きの1ページ目だけで4カ所の訂正がある。この教科書で勉強していたら子供たちはどうなりますか? 誤字脱字のレベルではない。本質的な間違いが50カ所もある」
自民党の中田宏参院議員は3日の予算委員会で、昨年4月から全国の高校1年生が使用している東京書籍の「新高等地図」の大量訂正を、こう問題視した。
前代未聞の不祥事について、東京書籍は「最終版の校閲作業のスケジュールが押した。コロナ禍での在宅勤務でコミュニケーションが取れなかった」と説明・謝罪しているが、教科書会社の言い分として理解困難だ。すでに約3万6000冊が供給されているが、1月から訂正済みの2万6000冊以上を再配布したという。
問題は教科書会社のミスだけではない。「新高等地図」が、2020年度の文科省の教科書検定で合格していることだ。
教科書検定とは、民間で著作・編集された図書について、文科相が教科書として適切か否かを審査し、これに合格したものを教科書として使用することを認める制度だ。現実には、文科省の調査官が審査を行っている。
中田議員は先の予算委員会で、「新高等地図」の検定で文科省の調査官が付けた検定意見は「20カ所」にとどまっていたのに対し、19年度の検定では自由社の中学校の歴史教科書に「405カ所の意見がついて『一発不合格』になっている」と指摘した。検定合格後に約1200カ所の訂正が許された今回と比較し、「検定の意味、信頼が問われる」とも質した。
岸田文雄首相は「教科書の信頼確保のため、審査体制をはじめとして制度の不断の改善をはかりながら適切に検定が運用されることが非常に重要だ」と述べたが、文科省の姿勢は疑問だ。