「聞いてくださいよ。もう死にたいっすよ」。2023年の正月、東日本大震災の被災地で暮らす男性(40代)から突然の電話があった。聞けば、死にたいという直接の原因は、家族とのトラブルだという。 男性とは2012年夏、取材していた仮設住宅で出会った。当時から心休まることがない、落ち着かない生活が続いていた男性に詳しく聞くため、震災から12年を迎える今年3月、宮城県気仙沼市に向かった(ライター・渋井哲也)。 ●大晦日に母親と大げんかしていた 「もう死ぬかと思いましたよ」。数年ぶりに会った彼は、少し痩せたように見える。 「きっかけは、お袋との大げんかです。大晦日に(自営業をしている)事務所の掃除をしていたときなんです。何をどこに置くのか、という話で揉めました。 そのとき、ちょっとイラついたお袋は、事務所の壁をバンバンと叩いたんです。半分ボケてるのか、しつこいんですよ。『もう言わないで』という意味で、バンバンと叩いたんです」 壁を叩くことでさらに怒りが増したのか、母親は事務所の現金と通帳を持って、姿を消した。 「警察に連絡したところ、すぐに見つかりました。しかし、居場所は言いたくないということで、いまはどこにいるのかわかりません。 ただ、最終的には、お金と通帳は戻ってきました。たぶん、警察に言われたんだと思います。『このままだと窃盗になる』とか、なんとか」 お金が戻り、一件落着のように見えるが・・・。 「お袋が事務所にお金を戻したのは1月10日ごろです。それまで手持ちの現金がなく、電子マネーの設定もしていなかったので、大晦日からそれまで、ほとんど食べずに過ごしました。 渋井さんに電話したのは、そんなときですよ。家に食糧はなかったので、寝て過ごすのが一番でした。ジュースだけはたくさん買ってあったので、飲んで、寝ていました。でもお腹空くじゃないですか。 そのあとクレジットカードを見つけたので、コンビニで食べ物を買って、食いつないでいました」 ●何度も「死んで楽になりたい」と思った しかも事業は、必ずしもうまくいっているとは言えない状況だという。もちろん新型コロナ感染拡大の影響もある。 「津波で、事務所も家もまるごと流されました。国から助成金がもらえると言っても、復旧のためにかかる費用が100%出るわけではありません。借金して、事業を再開するしかなかった。しばらくは調子よかったですが、そんなときにコロナですよ。
「聞いてくださいよ。もう死にたいっすよ」。2023年の正月、東日本大震災の被災地で暮らす男性(40代)から突然の電話があった。聞けば、死にたいという直接の原因は、家族とのトラブルだという。
男性とは2012年夏、取材していた仮設住宅で出会った。当時から心休まることがない、落ち着かない生活が続いていた男性に詳しく聞くため、震災から12年を迎える今年3月、宮城県気仙沼市に向かった(ライター・渋井哲也)。
「もう死ぬかと思いましたよ」。数年ぶりに会った彼は、少し痩せたように見える。
「きっかけは、お袋との大げんかです。大晦日に(自営業をしている)事務所の掃除をしていたときなんです。何をどこに置くのか、という話で揉めました。
そのとき、ちょっとイラついたお袋は、事務所の壁をバンバンと叩いたんです。半分ボケてるのか、しつこいんですよ。『もう言わないで』という意味で、バンバンと叩いたんです」
壁を叩くことでさらに怒りが増したのか、母親は事務所の現金と通帳を持って、姿を消した。
「警察に連絡したところ、すぐに見つかりました。しかし、居場所は言いたくないということで、いまはどこにいるのかわかりません。
ただ、最終的には、お金と通帳は戻ってきました。たぶん、警察に言われたんだと思います。『このままだと窃盗になる』とか、なんとか」
お金が戻り、一件落着のように見えるが・・・。
「お袋が事務所にお金を戻したのは1月10日ごろです。それまで手持ちの現金がなく、電子マネーの設定もしていなかったので、大晦日からそれまで、ほとんど食べずに過ごしました。
渋井さんに電話したのは、そんなときですよ。家に食糧はなかったので、寝て過ごすのが一番でした。ジュースだけはたくさん買ってあったので、飲んで、寝ていました。でもお腹空くじゃないですか。
そのあとクレジットカードを見つけたので、コンビニで食べ物を買って、食いつないでいました」
しかも事業は、必ずしもうまくいっているとは言えない状況だという。もちろん新型コロナ感染拡大の影響もある。
「津波で、事務所も家もまるごと流されました。国から助成金がもらえると言っても、復旧のためにかかる費用が100%出るわけではありません。借金して、事業を再開するしかなかった。しばらくは調子よかったですが、そんなときにコロナですよ。