セクシャルハラスメントで訴えられたのはセクハラ対策の専門家の弁護士だった。「演劇・映画・芸能界のセクハラ・パワハラをなくす会」代表で舞台俳優の知乃さん(25)が3月2日、訴訟の打ち合わせなどの過程で性行為などを強要されたとして、同会の顧問、馬奈木厳太郎(まなぎいずたろう)弁護士(47)に1,100万円の損害賠償を求めて提訴した。
司法担当記者が解説する。
「知乃さんは2017年に演出家からセクハラを繰り返し受けていたとしてツイッターで告発。日本の#MeToo運動の先駆けとなった1人です。その男性とは和解しましたが、会を立ち上げ、他の被害者を救う活動も続けてきた。その知乃さんがセクハラにも法律にも通じる専門家として頼ったのが、馬奈木弁護士でした」
ところが、馬奈木氏は会の顧問に就任した19年9月頃から知乃さんの身体を触ったりするようになり、彼女が抱える別の訴訟の代理人に就任した21年以降はその行動が更にエスカレートしていったという。
「知乃さんは訴訟の打ち合わせなどで呼ばれると、馬奈木氏から太ももを触られたりキスをされたりし、『2人きりになれるところに行ける?』などとラブホテルに誘われたといいます。LINEで入浴中の写真も求められ、昨年1月には、性行為も強要された。会見では『依頼業務を続けてもらうには男女関係を断ることはできないと思った』などとし、弁護士の地位を悪用されたと主張。昨年2月に代理人を解任しました」(同前)
父も妻も弁護士の馬奈木氏
馬奈木氏はどんな人物なのか。父・馬奈木昭雄氏もまた、水俣病の訴訟で被害者側に立って国と争い、名を馳せた著名弁護士だ。昭雄氏はその後も、諫早湾干拓関連訴訟に参加するなど公害訴訟の最前線に立ってきた。その道を継いだのが息子の馬奈木氏だった。
「福島第一原発事故で避難を余儀なくされた被災者への賠償を国や東京電力に求める訴訟では、弁護団の事務局長としてマスコミ対応などもしてきた」(同前)
馬奈木氏は父だけでなく、妻も弁護士。“共稼ぎ”ということもあり、21年には、都内の一等地に土地建物で2億円前後と見られる物件を購入していた。昨年3月には朝日新聞の「ひと」欄に登場し、原発事故の被害者救済に意欲を見せるなどしていたが、
「解任後も謝罪はなく、メディアに出続けていたとして、昨年11月に弁護士会に懲戒請求。今年2月下旬には知乃さんが3月3日に会見を開くことが判明し、3月1日、馬奈木氏はそれに先立ち、ブログで『既婚ながら好意を抱いた』『人として許されない行為』と謝罪しました」(同前)
馬奈木氏は今後、専門家のカウンセリングを受け、過ちを繰り返さぬよう自らを律していくとしている。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年3月16日号)