袴田巌さん、再審無罪の公算…死刑事件で過去4例の再審はすべて無罪

1966年6月に静岡県の一家4人が殺害された「袴田事件」で、東京高検は20日、強盗殺人罪などで死刑が確定した袴田巌・元被告(87)の再審開始を認めた13日の東京高裁決定を受け入れ、最高裁に特別抗告をしないと発表した。再審開始決定が確定し、静岡地裁で開かれる再審公判で袴田さんが無罪となる公算が大きくなった。
死刑事件で過去に再審開始が確定したケースは4例あり、いずれも再審公判で無罪が言い渡されている。袴田さんが再審無罪となれば、5例目となる。
東京高検の山元裕史次席検事は20日、「高裁決定には承服しがたい点があるものの、特別抗告を申し立てる理由があるとの判断に至らず、特別抗告しないこととした」とコメントした。
高裁決定は、事件から1年2か月がたった67年8月に現場近くのみそタンク内から発見され、確定判決で袴田さんが犯行時に着ていたと認定された「5点の衣類」に付いた血痕の色に着目。当時の実況見分調書で「濃赤色」などと記されていたことに対し、「1年後なら黒く変色し、赤みは消える」とした弁護側の実験結果を「無罪を言い渡すべき新証拠」と認めて再審開始を決定した。「5点の衣類」は捜査機関がみそタンクに入れた可能性が極めて高いとして、「証拠 捏造 (ねつぞう)」の可能性も指摘した。
高裁決定を受け、東京高検は当初、特別抗告する方向で最高検と検討を進めていた。だが、特別抗告の要件は憲法違反か判例違反に限定されており、高検と最高検が20日の抗告期限当日まで詰めの調整を続けた結果、どちらの要件も満たさないとの結論に至ったとみられる。
山元次席検事は20日、東京・霞が関の検察合同庁舎で臨時記者会見を開いたが、再審公判での検察側立証の予定については「差し控える」と述べるにとどめた。

袴田巌元被告は、再審公判で無罪となる公算が大きいことから、記事の最初のみ元被告の呼称とし、それ以外は敬称とします。