「闇バイト」対策 犯罪者の募集は放置できない

SNSで犯罪の実行犯を公然と集めている状況は、到底看過できない。政府や民間事業者は有害な投稿を素早く見つけ、投稿者の摘発や削除につなげるべきだ。
強盗や特殊詐欺のメンバーをSNSで募る「闇バイト」について政府が緊急対策をまとめた。AI(人工知能)を使った募集投稿の自動検知や、SNS事業者らへの削除要請を強化するという。
背景には、昨年から今年にかけて、闇バイトに応募した若者らによる強盗事件が全国で相次ぎ、死者まで出ていることがある。
「日当100万円」などの書き込みを見て応募した若者らは、指示役の命令で、店舗や住宅に押し入って金品を奪ったり、振り込め詐欺に加担したりする。
実行犯と指示役は面識がなく、警察が実行犯を摘発しても、指示役にたどり着けない実態がある。闇バイトを募る投稿を消去し、実行犯を集められなくすれば、指示役が事件を起こすことは困難になり、抑止につながるはずだ。
闇バイトの募集投稿には、「強盗」など一読して分かる言葉は使われない。隠語で巧みにメンバーを募る。警察はまず、募集にどのような単語が使われているのか詳しく分析し、自動検知に活用するAIに学習させる必要がある。
職業安定法は、有害な業務に就かせる目的での労働者募集を禁じており、罰則もある。政府は、違法な投稿がないかどうか監視を徹底するよう、SNS事業者などに働きかけるべきだ。警察も、厳しい取り締まりが求められる。
闇バイトは「金ほしさ」や「仲間に誘われた」などの理由で応募する若者が多い。政府の緊急対策は、若者がアルバイト感覚で犯罪に加担しないよう、教育現場で伝えることの重要性も指摘した。
安易に応募すれば、指示役らに身元を知られ、脅されて抜け出せなくなる。使い捨てにされ、重い代償を支払うことになることを自覚させねばならない。
仕事がなく、地域で孤立している若者が事件に加担しないよう、政府は、若者の就労支援などにも力を入れてもらいたい。
強盗や特殊詐欺に使われる携帯電話は総務省、求人関連は厚生労働省、若者への教育は文部科学省など、闇バイト対策は多くの省庁にまたがる。縦割りの壁を越え、連携を深めることが重要だ。
特殊詐欺では、取り締まりを強化するたびに新たな手口が登場するイタチごっこが続いてきた。連鎖を断ち切らねばならない。