長崎県警は3月21日、前日に壱岐市の海岸で見つかった遺体が壱岐高校2年生の椎名隼都さん(17才)であることを発表した。隼都さんは茨城県出身。長崎県の「離島留学制度」を使って中学2年生のころに島に移り、里親Aさん宅でほかの留学生たちと共同生活をおくっていた。3月1日の午後4時半ごろに里親宅で姿を確認されたのを最後に行方不明になり、17日から長崎県警の公開捜査が行われていた。
『週刊文春』は公開捜査に先立つ3月15日、里親Aさんの虐待疑惑を報じ、ほかの里親による「隼都さんはAさん夫妻から日常的に叩かれたり、怒鳴られていた」などの証言を取り上げた。地元住民が語る。
「Aさんは地元のイベントやメディア事業に関わっていて、ちょっとした有名人。以前から島で里親をやっています。椎名くんが行方不明になり、虐待疑惑が報じられてからも、ほかの小中学生の里子たちは、Aさんのところに住み続けています」
Aさん宅には、壱岐市が行う「いきっこ留学制度」を通じて島にやってきた小中学生たちが今も身を寄せている。この子どもたちの状況について、壱岐市教育委員会に問い合わせた。以下の答えは全て3月17日に返ってきたものだ。
──里親Aさんの虐待疑惑については把握しているか?
「里親の虐待疑惑については、教育長自ら当該里親(Aさん)の聞き取りを実施し、そのような事実は確認しませんでした」(壱岐市教育委員会の担当者、以下同)
──Aさんのもとには里子がまだ6人いるそうだが、別の里親のもとに移す予定はあるのか?
「聞き取りの結果、『問題なし』と判断しており、別の里親へ移す予定はありません。また、計6人の小・中学生も引き続きお世話になることを希望しています」
──当該里親のもとにいる里子たちへの聞き取りは行っているか? また、聞き取りの予定はあるか?
「市教委としては、直接留学生への聞き取りは実施していません。該当する留学生である中学生2名への聞き取りを壱岐警察署が実施しており、その結果は市教委に報告され、共有しています」
──虐待報道の事実関係をどのように捉えているか?
「当該里親が現在預かっている留学生の実親に対しても、教育長自ら状況説明と聞き取りを実施した結果、問題となるような事実はありません。実親さんから『今回の(虐待疑惑の)記事は事実と異なり、不愉快に思っている。実親みんなで当該里親さんを支えていこう』という言葉を頂き、当該里親に厚い信頼を寄せていることを確信しています。
当該里親のもとに現在いる留学生たちは、制度を継続している方々で、もし虐待を受けているなら市教委や学校に相談しているはずです。留学生や実親から虐待の訴えは何もありません」
──里親が里子たちを適切に世話しているか、市はどのようにチェックしているか?
「“いきっこ留学コーディネーター”を配置し、関係者(里親・実親・留学生・学校)と定期的に情報交換することで、困り事などを聴き出し、必要に応じて適切に対応しています」
──制度の不備や、それを見直す予定はあるか?
「これから『いきっこ留学制度』をさらに充実させるために、必要に応じて見直しをして整備していきます」
市教委の見解は「問題なし」。留学生たちの島暮らしは、これからも続く──。