「孤立出産、刑罰ではなく福祉の対象に」 元実習生に逆転無罪

双子の遺体を遺棄したとして1、2審で有罪判決を受けたベトナム人の元技能実習生、レー・ティ・トゥイ・リンさん(24)に24日、最高裁が逆転無罪の判決を言い渡した。「私は子供を捨てたり隠したりしていない」。一貫して無罪を主張してきたレーさんの思いが、司法を突き動かした。
「勝訴 リンさん無罪」
午後3時過ぎ、レーさんの逆転無罪を告げる紙が支援者により掲げられると、最高裁前に集まった支援者からは「やったー!」「桜と一緒で満開の判決だね」と歓声や拍手が湧き起こった。主任弁護人の石黒大貴弁護士も「無罪」と書かれた紙を広げ「リンさんの行為が犯罪ではない、と真正面から認めてくれた」と笑みをこぼした。
支援者によると、地元・熊本で待機していたレーさんは判決の一報を聞くと、椅子に座ったまま、かみ締めるように涙を静かに流していたという。
判決後の記者会見にオンラインで出席したレーさんは「逮捕されてから、ようやく(最高裁)判決の日を迎えた。無罪判決を聞き、本当にうれしい。この2年4カ月は本当に長く、心が折れかけたが、そのたびに支援者や弁護士に励まされ、希望を見いだして今日まで頑張ることができた」と語った。
会見に同席した石黒弁護士は、死産した双子をタオルで包み、子供の名前や弔いの言葉を書いた手紙を箱に入れたレーさんの行為について「死者への敬虔(けいけん)感情を害するものではない、と1審から一貫して言い続けてきた」と強調。判決がこの行為について「習俗上の埋葬と相いれない処置とは認められない」と判断したことを評価した。
更に、判決が「相いれない」という基準から死体遺棄罪が成立するか否かを判断したことについて、石黒弁護士は「実習生のみならず、さまざまな要因で孤立出産に追い込まれた女性が取った行動が、安易に犯罪として扱われてはならないというメッセージが込められているのでは」と推し量った。
レーさんを支援してきた市民団体「コムスタカ―外国人と共に生きる会」(熊本市)の中島真一郎代表は「妊娠した実習生が救済されている事例は限られており、多くは帰国させられている」と指摘。「判決を機に、実習生を一人の人間として扱い、安心して子供を産める制度に変えるべきだ。孤立出産する女性を刑罰の対象ではなく、社会福祉の対象として保護する社会になってほしい」と訴えた。【栗栖由喜】
遺体の扱いに敬意 無罪は妥当
大庭沙織・福岡大准教授(刑法)
判決は、おわびを書いた手紙とともに段ボール箱に遺体を入れて自宅の棚に置いたという今回の事件の事実関係を重視した。遺体が敬意を持って扱われたかどうかという観点で罪が成立するかを判断しており、無罪は妥当だ。最高裁は「習俗上の埋葬などと相いれるか」という死体遺棄罪を検討する際の観点を示したが、孤立出産であってもコインロッカーや床下に隠した場合はこれまで通り罪に問われる可能性が高い。捜査機関は事件ごとに死体遺棄罪の成立を慎重に判断する必要がある。