コロナワクチン8.8億回分、国の確保量「根拠不十分」 会計検査院

会計検査院は29日、国が進める「新型コロナウイルスワクチン接種事業」の実施状況に関する検査結果を公表した。厚生労働省は2020~21年度に計8億8200万回分のワクチンを確保したが、検査院は「数量の算定根拠が十分でなく、実際の必要数量に比べて著しく過大な場合、不経済な事態が発生しかねない」と指摘。今後、同様の状況が起きたら数量の妥当性を客観的に検証できるようにすることを求めた。
検査院は、ワクチン接種事業を検査対象とした理由を「多額の国費が投入され、国民の関心が高い」と説明。国によるワクチンの確保▽接種に必要な物品の調達▽接種事務に関するシステムの開発――などが適切かを検査した。
検査報告書によると、国がワクチン接種事業で20~21年度に支出したのは、計4兆2026億円。予算に対する執行率は68・4%だった。全人口の約8割が2回目まで、約4割が3回目までの接種を完了していた。
ワクチン8億8200万回分は2兆4718億円かけて確保された。確保量の種別内訳は、ファイザー3億9900万回分▽モデルナ2億1300万回分▽ノババックス1億5000万回分▽アストラゼネカ1億2000万回分。同省は確保量について「世界各国でワクチンの獲得競争が継続している中、国民が速やかにワクチンを接種できるよう、あらゆる可能性を視野に入れて確保に努めた」としたが、検査院は同省の資料に算定根拠が十分に記載されていないと指摘した。
検査院は、ワクチン在庫数量についても「厚労省は業者からの納入数量や自治体への配布数量を必要に応じて確認していたが、在庫数量を算出したことを示す記録が作成されていない」と問題視。また、アストラゼネカワクチンは自治体への配布量が少なく、同省が未納入分をキャンセルして返金を受ける契約を結んでいたものの、「返金額の妥当性について確認していない」と改善を求めた。
さらに、検査院はワクチン接種事業に関する国の情報システムについても問題点を挙げた。内閣官房が21年4月、市町村担当者が接種記録を把握できるよう稼働させた「ワクチン接種記録システム(VRS)」で他人の接種記録が登録されたり、接種者不明の登録があったりするケースが生じたことに言及。検査院はこうした誤登録で追加的な業務や費用が発生したとし、「今後は緊急的にシステムを導入する必要がある場合でも、システム利用者に大きな負担が生じないよう、仕様などを適切に検討すること」が必要だとした。【柿崎誠】