東京弁護士会で所属弁護士らの懲戒委員会が9月27日、開かれた。懲戒審査を受けたのは弁護士法人ベリーベスト法律事務所(以下、ベリーベスト)と、代表弁護士の酒井将弁護士と浅野健太郎弁護士の3者である。
酒井弁護士らは株式会社も経営し、弁護士189人を抱える事務所グループは国内で6番目の規模。事務員は500人いるという。国際法律事務所が上位を占めるなか、国内事件中心でこの規模は異例である。
懲戒が立件された主な理由は、ベリーベストが司法書士法人の新宿事務所(当時)から過払い金案件を紹介された際に19.8万円を支払ったことが紹介料なのか、それとも業務委託といえるかということ。弁護士法や弁護士職務規程では、案件の紹介を受けて対価を支払う「紹介料」は禁じられているからだ。
■10枚の傍聴券に約80人
懲戒審査は、東京弁護士会として初めて公開にされたという。異例の出来事に10枚の傍聴席に80人近くの希望者が訪れたという。メディアも例外ではなかったのだが、記者は2時間30分に及ぶ公開期日を傍聴することができた。
一般的には懲罰が審査される弁護士が懲罰委員会を公開にすることはないが、今回はベリーベスト側の希望で公開になった。清廉潔白であることを強調したいからだろう。
委員長と主査、外部委員6人に委員5人の壮年の13人が40代弁護士2人の審査に当たった。ベリーベスト側も6人の弁護士をつけ、会議室はぎゅうぎゅう。一般的な裁判よりも物々しい雰囲気だった。
この日の委員会は事実関係の質問のみ。あとは法律的な問題で、その審査は書面で行うというので、このような審査はもう開かれない予定。
主査として松田耕治弁護士が、主に書類の不備などについて質問をした。鋭い質問だったのか、この日に向けてロン毛を切った酒井弁護士は「それは新宿事務所に確認しないとわからない」と答える部分が何度かあった。
審査の中で酒井弁護士が明らかにしたが、過払い金返還請求の成功報酬は一件平均60万円で、月に200、300件扱っていたときは、1カ月で1億円ほどの売り上げがあったという。
酒井弁護士に対し、松田主査が「依頼者の視点が抜けていないか。(依頼者を)商品化していないか」「一律に19.8万円を支払うこと新宿事務所の非弁行為(非弁護士行為)を幇助しているのではないか」と意見する場面も。松田主査は発言を一部撤回したが、“合理的”に大量に案件を処理することで急成長した新興法律事務所や司法書士事務所に、一定層の弁護士たちが苦々しく思っている姿が垣間見えた気がした。
■丸山和也弁護士の姿も
また、どういう関係なのか、8月の参院選で落選した丸山和也弁護士もベリーベスト側弁護士の1人として出席していた。
丸山弁護士は「政権与党には弁護士会から懲戒権を奪おうという意見もある。弁護士自治は重要だ。弁護士会は懲戒権を濫用すべきではない」と、懲戒権の行使に牽制球。
審査では、貸し金返還を手がける弁護士や司法書士が貸金業者やライバル法律事務所からあの手この手で狙われてきた経緯もうかがえた。
一方で、酒井弁護士は「引き受けてくれる弁護士がいなくなってしまうので依頼を引き受けた」と話すなど、弁護士会もベリーベストも依頼者保護を強調したが、酒井弁護士は「新宿事務所から引き受けた案件の依頼者からクーレムを受けたことはないか」との質問に「ない」と言い切っていた。
これらが本当ならば、この懲罰はどのような依頼者保護になるのか。この騒動で誰が得をするのか、考えてみたい。
(取材・文=平井康嗣/日刊ゲンダイ)