ニュース裏表 平井文夫 ピンとこない少子化対策 財源なき政策に説得力なし 「出産の保険適用」「給食の無償化」も試案に入ったもののやるのか分からず

政府が少子化対策のたたき台となる「試案」を3月31日(先週金曜日)に発表した。翌朝、新聞各紙を読んでみたのだが、どうもピンと来なかった。
対策のメニューそのものは悪くない。「児童手当の高校生までの支給延長」や、「多子世帯への加算」「奨学金の拡充」「育児休暇の拡大」など、子作りをためらう若者の期待に応えるものだ。
識者の評価も、中京大学の松田茂樹教授の「欧米に比べて見劣りしていた現金給付が増えれば、子育てに対する経済的不安が軽減されるだろう」(産経新聞)など、おおむね高かった。
ただ、この試案に説得力が感じられない理由は、財源が示されていないからだ。昨年政府が「防衛力強化」を打ち出したとき、年間4兆円の防衛費増額のうち1兆円を法人税、所得税などの増税で賄うことを決めたのだが、これに世論が強く反発した。
これに懲りて、岸田文雄政権のもう一つの目玉政策である少子化については、予算の総額も財源もぼやかしたまま、先に「何をやるか」だけを決めることにしたらしい。
しかし、財源という後ろ盾のない政策を示すことに意味があるのか。自民党は何かあると民主党政権をバカにするが、2009年に民主党政権がマニフェストで示した「月2万6000円の子ども手当」でも、財源は一応示されていた。ただ、実際には「埋蔵金」を探したものの見つからなかったのだが。
財源の話抜きだと、「じゃあ、これも入れてくれ」と、どんどん額が膨らむものだ。直前に菅義偉前首相が打ち出した「出産費用の保険適用」、茂木敏充幹事長の「給食の無償化」も試案には入ったのだが、「含めて検討」とか「向けて課題を整理」とか、やるのかやらないのか分からない。
これでは、「統一地方選を前に、実現可能性の分からないバラマキ政策を並べただけ」と批判されても仕方ないのではないか。
試案に書かれていることの実現には年4兆円から5兆円、すなわち防衛費の増加分と同じくらいかかるらしい。今のところ「社会保険料アップで1兆円、残りは歳出削減で時間をかけて実現する」というのが岸田首相のハラのようで、3日の参院決算委員会では「教育国債」発行には一応否定的な考えを示した。
だが、首相周辺は、防衛費に比べれば教育については国債発行のハードルは高くないという感触だ。借金をして、われわれが必要だと思う少子化対策をやって、その借金を子や孫に返済してもらうというのは無責任ではないか。われわれが払う(増税)か、他を削る(歳出削減)のどちらかではないか。
「シルバー民主主義国家」である日本は、やはり高齢者への社会保障費を削るのがスジだ。「異次元」の少子化対策をやるということは、それだけの覚悟が必要だと思う。 (フジテレビ上席解説委員・平井文夫)