「えっ」と驚く候補者も…物価高が直撃「マッチョな選挙活動はできない」

統一地方選で行われている青森県議選は、ロシアのウクライナ侵略や、コロナ禍が招いた物価高対策が争点の一つとなっている。経済の混乱は、選挙活動そのものにも影響しているようだ。選挙用品を扱う業者は値上げを決め、候補者は選挙費用の節約に努めている。
選挙カーや候補者用の看板を扱う県内の業者は今回、軒並み1割程度値上げした。看板などに使う木材の価格がコロナ禍での需要増による「ウッドショック」に加え、ウクライナ侵略で高騰したためだ。担当者は「選挙用品は値上げしにくい。『えっ』と驚く現職候補もいたが、資材価格や人件費が上がり、最小限の値上げをせざるをえなかった」と説明する。
特に打撃を受けているのが選挙カーだ。コロナ禍による半導体不足などでレンタカーの車両が減少。この業者は、統一選で県議選を実施しない岩手県などから手配し、不足分を補った。品薄はレンタカー相場の上昇をもたらし、青森県外から運ぶ輸送費も生じた。担当者は「今年は(6月に)知事選もある。部品不足で修理も難しく、車両を十分に手配できるか不安だ」と憂慮する。
選挙費用の高騰は、候補者の財布を細らせている。
ある新人候補は、選挙カーの欠品と料金の高騰で大型車のレンタルを諦めた。選挙の間は休職するため、出費は最小限に抑えたいところだ。マイカーを改造することも考えたが、より安く済む軽乗用車を借りた。「狭い軽乗用車だとスタッフも疲れる。ただ、こんな状況を変えるために立ったので、最後まで動き続ける」と自分を奮い立たせる。

選挙費用の一部は公費負担となる。選挙カーのレンタルは1日1万6100円など項目ごとに上限が定められ、超過分は自己負担となる。県議選の候補は通常、9日間使用し、30万~50万円程度かかる場合が多いため自己負担は避けられない。また公費負担分は選挙後に支払われるため、候補者が立て替える必要がある。
別の新人候補は自宅を事務所にし、選挙カーも拡声機が付いていない安価な車を使っている。「物価高で生活が苦しく選挙費用も高騰し、これまで通りの『マッチョな選挙活動』はできない」と苦笑い。「時代が変わっているのだから、選挙も変わるべきだ。大規模な選挙戦はできないが、共感してくれる人もいるはず」という信念で街頭に立つ。
また、自治体にも物価高は暗い影を落としている。県は、県議選予算(23年度当初)として前回(19年度当初)比6%増の7億3388万円を計上。増額は新型コロナウイルス対策などを見込んだためだが、県選挙管理委員会の担当者は「急激な物価高は計算し切れていない。皮肉にも想定より候補者が少なく費用は抑えられているが、十分なのかはわからない」とこぼす。