勝敗の行方が国家的プロジェクトにも影響 統一地方選・前半戦、9日投開票 注目は「ポスト岸田」の真価問われる奈良県 リニアの未来左右する静岡市

統一地方選・前半戦の投開票が9日行われる。9道府県知事選と6政令指定市長選、41道府県議選、17政令市議選という、地元に密着した首長や議員が選出される。各候補はそれぞれの政策や主張をアピールしているが、選挙の勝敗は、今後の国政や国家的プロジェクトにも影響しそうだ。注目の「奈良県知事選」と「静岡市長選」に迫った。
奈良県は高市早苗経済安保担当相のおひざ元で、自民党県連会長も務めるだけに、知事選は「ポスト岸田」としての真価が問われる戦いだ。
6人が立候補するなか、自民党県連が推す新人で元総務官僚の平木省氏(48)と、5選を目指す現職の荒井正吾氏(78)、日本維新の会公認の元同県生駒市長の新人、山下真氏(54)が激しく競り合う。
平木氏は、高市氏が総務相時代の秘書官で、高市氏が推している。高齢の荒井氏には世代交代論もあったが、森山裕選対委員長や二階俊博元幹事長ら党重鎮の後ろ盾をアピールする。党本部は推薦を決めずに選挙戦に突入した。
保守分裂選挙のなか、勝機を伺うのが山下氏だ。生駒市長を3期9年務め、かつて無所属で知事選に出馬するなど知名度もある。
永田町関係者は「情勢調査では、山下氏がやや先行、平木氏が猛追し、荒井氏が続く構図だ。一部野党が、放送法の『政治的公平』に関する行政文書をめぐって高市氏を攻撃して、国会を離れられなかったことも、情勢に影響している可能性がある。地元知事選で推した候補が勝てなければ、『ポスト岸田』は厳しくなる。ただ、保守分裂となった背後に、自民党内の『高市潰し』の思惑を指摘する声もある」と語る。
NHK大河ドラマ「どうする家康」の舞台として盛り上がる静岡市では、無所属で元県議の山田誠氏(61)、共産党公認で党県常任委員の鈴木千佳氏(52)、無所属で元副知事の難波喬司氏(66)=自民、立民、公明、国民推薦=という3新人の争い。
主な争点は、リニア中央新幹線南アルプストンネル(静岡市葵区)工事への対応だ。
リニア中央新幹線は品川と名古屋の約300キロを、約40分で結ぶ。日本経済を活性化させるだけでなく、「インフラ輸出の目玉」としても期待される。中国もリニア開発を進めており、一日も早い開業が望まれるが、川勝平太県知事が「工事で大井川の流量が減少する」などと反対し、目標の2027年開業は絶望的な状況だ。
市長候補3人のうち、山田氏と難波氏は「リニア推進」で、鈴木氏は「反対」を表明している。
前出の関係者は「リニア中央新幹線は約300キロのうち、静岡県内を8・9キロしか通らない。与野党が相乗りで優位に立つ難波氏は『一自治体の長が(国家的プロジェクトを)止めてはいけない』と公言している。工事許可の権限は川勝知事にあるが、選挙結果次第で事態が動くかもしれない」と語っている。
【奈良県知事選、立候補者】
山下 真54 元生駒市長 維新
平木 省48 元総務官僚 無新
尾口五三72 元大和郡山市議 無新
荒井正吾78 知事 無現
西口伸子68 元中学講師 無新
羽多野貴至43 会社員 無新