九州北部大雨 87万人に一時避難指示 2人死亡、病院孤立も

九州北部は28日、前線の影響で発達した雨雲が次々に流れ込み、記録的な大雨となった。気象庁は28日午前5時50分、佐賀、福岡、長崎3県に最も警戒が必要な「警戒レベル5」に相当する大雨特別警報を発表した。車が水に流されるなどして佐賀、福岡両県で2人が死亡、1人が意識不明の重体。避難指示は一時約87万人に上った。佐賀県の順天堂病院で患者ら201人が孤立状態となっている。特別警報は午後2時55分に解除されたが、九州北部は29日にかけて再び雨が強まり、大雨となる見込み。気象庁は引き続き厳重な警戒を呼びかけている。
佐賀県武雄市武雄町では28日午前5時15分ごろ、武雄川近くの市道で車が水に流されたと110番があった。軽乗用車は近くの水田で見つかり、車内から50代の男性が救助されたが、搬送先で死亡が確認された。市道は当時冠水していた。
福岡県八女市立花町山崎では28日午前8時10分ごろ、「男性が車に閉じ込められ水路に流されている」と119番があった。県警などによると、男性(84)は車外に出たが途中で溺れた。近くで心肺停止の状態で見つかり、その後死亡が確認された。
佐賀市水ケ江でも28日午前9時25分ごろ、「水路に車が落ちた」と通報があった。佐賀県警によると、運転席から70代の女性が心肺停止の状態で救出された。その後呼吸は戻ったが意識不明の重体という。武雄市では住民の50代女性と連絡が取れなくなっており、県警などが捜索している。
佐賀市中心部や武雄市、同県大町町などでは広範囲に浸水が広がった。「身動きが取れない」などの119番が相次ぎ、ボートやヘリなどによる救出が実施された。武雄市役所は28日の窓口業務を停止。佐賀県の山口祥義知事は28日、陸上自衛隊に災害派遣要請した。県内の伊万里市を流れる松浦川と、小城市や多久市を流れる牛津川では一時氾濫が確認された。
佐賀県によると、大町町の順天堂病院は周囲が冠水し、午後8時時点で患者ら201人が孤立状態となっている。町内の鉄工所から流出した大量の油が到達して院内に入り始めており、患者らは2階に避難している。
交通網も乱れた。JR九州は博多と長崎、大分を結ぶ特急の一部を運休。29日も特急や普通列車の一部を始発から運休する。高速道路も長崎道や九州道などの一部が通行止めに。長崎道では武雄ジャンクション―武雄北方インターチェンジ間で路面が隆起し通行止めとなり、復旧のめどは立っていない。
28日午後5時現在の毎日新聞のまとめでは、佐賀、福岡、長崎の3県で計約36万7500世帯約87万5800人に避難指示が出された。
28日未明から朝にかけ、佐賀市などでは1時間に100ミリ以上の雨が繰り返し観測され、記録的短時間大雨情報の発表が相次いだ。26日午前0時の降り始めから28日午後10時までの雨量は長崎県平戸市527ミリ▽佐賀市458ミリ▽福岡県久留米市399ミリ――など。平戸市と佐賀市、久留米市では平年の8月の1カ月分の2倍を超えた。
気象庁によると、西日本から東日本に延びる前線に向かって非常に湿った空気が流れ込み、28日未明から積乱雲が次々と発生する「線状降水帯」となって大雨を降らせた。29日にかけて線状降水帯が再び発生し非常に激しい雨が同じ地域で数時間続く恐れがあり、再び大雨特別警報を発表する可能性があるという。30日午前0時までの24時間の予想雨量は多いところで、佐賀、福岡、長崎、山口県150ミリ、大分県120ミリ、熊本県100ミリ。【杣谷健太、安藤いく子】