ラグビーワールドカップ(W杯)日本代表のスクラムハーフ、流大選手(27)は高校時代、授業が終わると教室を飛び出し、練習道具の準備など雑用を率先した。「背中でものを言えるようになれ」。恩師の教えを愚直に続けてきた流選手は、代表でも誰よりも大声で鼓舞しチームを引っ張る。
「試合中、ずっとしゃべって指示を出し続けていた。そこが一番良かった」。熊本県立荒尾高校(現岱志高校)ラグビー部の徳井清明監督(52)は、福岡県で見学した中学生の試合で流選手の姿に目を奪われた。「絶対JAPANになれる」と確信し、自宅まで出向き入学を口説き落とした。
入部後すぐに主力チームに組み入れたが、他県出身の1年生の起用は、部内に不協和音を生じさせる恐れもあった。「雑用を率先し、目配り気配りで先に行動しろ」。流選手は徳井さんの助言を愚直に実践した。
人一倍の向上心を持ち、全国大会出場を目指す流選手は、徳井さんとの毎日の交換日記にチーム内での意識の違いへの戸惑いをつづった。「チームのためなら言わなきゃダメだ。その代わり説得力を持たなきゃいけないよ」と伝えると、雑用に練習にさらに自分を律し、チームに献身した。
早朝からの朝練に通い、帰宅は夜10時ごろになる流選手は、「成績で1番になる」と目標に掲げた。いつ勉強するのか尋ねると、答えは「電車の中」。徳井さんは「あの子は何に対しても受け身じゃなかった」と振り返る。
主将として迎えた3年時の夏合宿での最終戦。部員の疲労がピークに達する中、試合はふがいない内容だった。浮かない顔の流選手に徳井さんは告げた。「チームのためなら、言いたいことは言わんかい。嫌われることを恐れとると? 最後にはみんな分かる」。グラウンドの端に部員を集め、涙目になりながら苦言を呈していた流選手の姿が、今でも忘れられないという。
進んだ帝京大やサントリーでも主将を務め、日本一を経験。代表の主軸に成長し、W杯開幕戦ではスタメンに起用された。
「例外をつくらず、きついことでも手を抜かずに淡々とやり続けた流は、現在進行形で成長している」。徳井さんはさらなる進化に期待を込めた。