WBCチケット20倍で転売、購入者「どうしても見たかった」…不正転売が消えない背景とは

野球日本代表「侍ジャパン」が優勝したワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。ファンらが熱狂する裏で、観戦チケットを20倍超の高値で転売したとして、神奈川県警大船署は13日、東京都清瀬市、会社員の男(45)をチケット不正転売禁止法違反の疑いで逮捕した。法整備など対策も進むが、人気イベントのチケットを巡る不正転売の摘発は難しい実態もある。(川崎大輝)

発表によると、男は3月16日に東京ドームで行われた準々決勝の日本―イタリア戦の外野指定見切り席のチケット(販売価格3500円)を、1月に売買仲介サイトを通じて7万5000円で転売した疑い。「生活費の足しにしたかった」と容疑を認めている。サイバーパトロールで容疑が浮上した。
イタリア戦では、大谷翔平選手(米エンゼルス)が「二刀流」で先発。購入した都内在住の50歳代男性は同署に対し「転売チケットを買ってはダメだと思っていたが、どうしても見たかった」と反省した様子で説明していたという。
男は、準々決勝のほかにも、日本が登場した1次ラウンドの韓国戦、チェコ戦など4試合のチケットもサイトに出品した形跡があるという。
チケットの高額転売を巡っては、音楽業界などから「転売業者が買い占め、ファンが入手できない」と規制を求める声が高まり、東京五輪・パラリンピックの開催も見据えて、2019年6月にチケット不正転売禁止法が施行された。主催者の同意なしに、定価よりも高値で継続的にチケットを転売することを禁じ、罰則(1年以下の懲役か100万円以下の罰金、または両方)も設けられた。

チケット販売会社などでつくる「チケット適正流通協議会」によると、同法の施行後、摘発への警戒感からか、転売価格は平均で5分の1程度に急落。だが、転売は再び増えている。

不正転売がなくならない背景には、コロナ禍を経て多くのイベントが再開したことに加えて、摘発が難しい現状もあるという。
対象はスポーツや芸能イベントのうち、日時や場所が指定されているチケットで、購入時に氏名や連絡先が確認され、「転売禁止」と明記しているなどの条件を満たした「特定興行入場券」に限定される。チケット不正転売禁止法の適用には営利目的の転売が繰り返されていることを立証する必要もあり、警察庁の統計によると、2021年に同法違反で摘発されたのは全国で10人にとどまった。
ネット上の法律問題に詳しい福井健策弁護士(第二東京弁護士会)は「匿名のアカウントを使う個人間の売買では販売者を特定することが難しく、継続的な転売を証明するのも困難。一度の転売でも摘発できるように、法改正を検討するべきだ」と語る。