「絶対許してはならない」癒えない被害者家族の苦しみ…知床観光船事故から1年

20人が死亡し、今もなお6人が行方不明という未曾有の事故は、
遺族や行方不明者家族、そして知床に、今も暗い影を落とし続けています。
(カメラマン)「知床半島沖合の上空です。観光船の姿は見当たりません」
去年4月23日、知床半島沖で観光船KAZUIは乗員・乗客26人を乗せ、海底120メートルに沈みました。
20人の死亡が確認され、今も6人の行方が分かっていません。
(記者)「どうして遺族に説明しないんですか」
観光船を運航していた知床遊覧船の桂田精一社長は、この事故について語ることを避け続けました。
そして事故から4日後に開かれた会見ではー
(桂田社長)「この度はお騒がせして申し訳ありませんでした」
(桂田社長)「海が荒れたら引き返す条件付き運航を豊田船長と打ち合わせ、出航を決めた」
桂田社長と出航を判断したという豊田徳幸船長。
人手不足だったことから、入社わずか1年で船長を任されていました。
事故当日は荒天が予想され、ほかの観光船や地元の漁師たちは出航を見合わせていました。
(他社の観光船会社)「僕は止めましたよ。行くんじゃないよだめだよとは言いました」
さらにずさんな管理体制も明らかにー
(記者)「アンテナが壊れているのに気付くのが遅いのでは」
(桂田社長)「ちょっと認識しておりません。申し訳ないです。ちょっと記憶にはないですけれども。その辺が私わかりません」
事故原因を調査する運輸安全委員会は、桂田社長が安全管理規程を軽視していたと指摘。
知床遊覧船がおととし国に提出した運航記録簿では「風速」や「波の高さ」の欄に、連日まったく同じ数値が記されていました。
海上保安庁は、業務上過失致死の疑いで桂田社長を立件する方針で捜査しています。
事故から1年を前にSTVは桂田社長に弁護士を通じ取材を申し込みましたが応じませんでした。
一方、運輸安全委員会は国の監査や小型船の検査を担う組織「JCI」の検査体制が不十分だったと指摘。
JCIは2月に検査員の体制強化などを盛り込んだ業務改善計画を国に報告しました。
一方、悲惨な事故から1年を前に、およそ20人の被害者家族がいまの思いを語ってくれました。
(被害者の家族)「事件以降、仕事も全く行けていない。精神的にも負担が大きくて、現在も薬をいただいている状態。非常に苦しいです」
会見では、桂田精一社長が説明責任を果たしていない、もうけを優先して安全対策をしていなかったと怒りの声が相次ぎました。
(被害者の家族)「桂田氏は事故を防ぐためにやるべきことをやっていなかった。知らないといえば無罪になる。こんなことは絶対ゆるしてはならない」
また事故で亡くなった北見市の鈴木智也さんの遺族もコメントを発表。
「気持ちの整理もつかずつらい毎日を過ごした1年」「『代われるならば代わってあげたい』」と思いながら過ごした」と心境を明かしました。
斜里町にある献花台では、きょうも多くの町民らが手を合わせていました。
多くの犠牲が出た事故から間もなく1年。
被害者やその家族の苦しみは癒えることはありません。