【全国初】特殊詐欺で摘発「少年の声」公開 なぜ少年たちは詐欺に手を染めてしまったのか…インタビュー動画で伝える 静岡県警

特殊詐欺事件に加担し、摘発される少年が増えている。こうした中、静岡県警は全国初の試みとして、摘発された「少年の声」を収録した啓発動画を公開した。なぜ少年たちは特殊詐欺に手を染めてしまったのだろうか。

(特殊詐欺に加担した少年)
「出し子として働いていた、ATMから引き出す仕事と言われた」「1回やめたくて、1回逃げたが、そこで『逃げられないよ』と脅された」「本当に取り返しがつかないことをやってしまったという思いが強く、本当に申し訳ない気持ちがある」

これは、特殊詐欺に加担し、静岡市葵区の少年院「駿府学園」に入る15歳から19歳の少年たちが、警察官のインタビューに当時の気持ちを打ち明けた動画。

県内の特殊詐欺事件は2023年に入ってから既に100件を超え、被害額は2億円以上。摘発される少年も増えているという。こうした中、県警は全国初の試みとして、特殊詐欺に加担した少年のインタビュー動画を作成し、HPやYоuTubeチャンネルで4月20日に公開。動画では、少年が特殊詐欺に手を染めたきっかけについて打ち明けている。

(特殊詐欺に加担した少年)
「地元の先輩に誘われてやりました」「友人から日雇いバイトがあるということで、紹介と言うか、やらないかということを言われて、その時、日雇いのバイトを探していたので、ちょうどいいやと思い『受けるよ』みたいな感じでOKしたんですけど」

先輩や友人の誘いにのった少年たちが加担することが多いのが、現金を受け取りに行く「受け子」や、ATMから現金を引き出しに行く「出し子」。グループの末端で実行役として動くため、摘発されるリスクも高い役目だ。

以前、私たちの取材に応じた闇バイトを募集する「リクルーター」をしているという人物は…。

(闇バイトのリクルーターを名乗る男性)
「捨て駒ですね、逮捕されるのは実行した人間、普通の仕事に戻る人はいないですね」

「受け子」や「出し子」を“捨て駒”と言い切った男性。この男性によると、一度、特殊詐欺に手を染めると簡単に抜け出せないという。

(闇バイトのリクルーターを名乗る男性)
「基本的に必要なのが名前、年齢、性別、住所、あと実家の住所も聞きますね、親の連絡先まで聞きます」「もし(金を)持ち逃げしたら、警察に情報を売ります、こいつ詐欺やりましたと、いちいちこっちもそいつの家に行って金返せと言っている暇はないので」

県警のインタビューに応じた少年たちも、特殊詐欺グループから簡単に抜け出せなかったと打ち明けている。

(特殊詐欺に加担した少年)
「今やめたら、先輩とかも怒ると思うから『どうなるかわからない』というふうに言われて、少し脅しの感じもあったんですけど、そういう風に言われたら、僕も少し怖くなってしまって、やめられませんでした」「やめた後、何かされるのではないかという恐怖がありました」「1回やめたくて、1回ちょっと逃げたんですけど、そこで『逃げられねえよ』と言う感じで脅されたので」「最初に、警察や家族に言うという脅しがあって、怖くて逃げられなかった」

警察庁によると2021年、特殊詐欺事件で摘発された少年は433人。そのうち8割近くの少年が「受け子」をしていた。県警のインタビューに応じた少年たちは、摘発されたときの“本音”も打ち明けている。

(特殊詐欺に加担した少年)
「すごく怖かったんですけど、もう特殊詐欺をやらなくてすむという風にとらえていて、捕まったことに少し安心を覚えていました」「捕まる以外で抜け出す方法がわからなくて、本当に安心したというか、やっと『やめられる』っていう思いでした」「自分自身、特殊詐欺が身近にあるとは、一切考えてなかったので、だけど本当に身近にあった、自分も普通に学校に通ってましたし、その中で急にこうなってしまった」「若い未成年、高校生・中学生もそうなんですけど、決して自分に起こらない、他人事だと考えてほしくない」

約10分間に編集された少年たちのインタビュー動画。県警は今後、中学生や高校生への非行防止教育に使い、特殊詐欺の恐ろしさを伝えていく考えだ。