望まぬ妊娠、孤立する女性 遺体遺棄事件で浮き彫りになった課題

「役所や産婦人科には身元がばれるのが怖く、親には関係を絶たれると思って相談できなかった」。出産した男児を殺害し、JR千歳駅のコインロッカーに遺棄したとして殺人罪などに問われ、2月に札幌地裁の裁判員裁判で懲役5年の判決を言い渡された母親の小関彩乃被告(23)は公判中に涙ながらに語った。事件が浮き彫りにした課題の一つが望まぬ妊娠で孤立する女性の相談体制のあり方だ。専門家は「匿名で相談できる環境が整えば未然防止できる」と訴える。【金将来】
特定NPO法人「10代・20代の妊娠SOS新宿―キッズ&ファミリー」が2022年3月、10~20代の女性400人に実施したインターネット調査によると、自身が予期せぬ妊娠をしてしまった場合、「誰にも相談できない」と答えた女性がほぼ半数を占め、4人に1人が「親には相談できない」と回答した。
札幌地裁であった証人尋問に出廷した2人の専門家は予期せぬ妊娠をし、誰にも相談できずに「孤立出産」を選ぶ女性に似たような背景があると指摘する。
小関被告の精神鑑定を担当した熊本県の吉田病院の興野康也医師(46)、熊本県で「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を運営する慈恵病院の蓮田健院長(56)は「幼少期からの度重なる失敗、それにともなう周囲からの嘲笑や叱責がトラウマとなり、大人になって大問題に直面したとき、『どうせ誰にも理解してもらえない』と一人で解決しようとする」と口をそろえる。小関被告もいじめを受けたり、実家を飛び出したりした経験のあることが1審の公判で明らかにされた。
匿名で話せる相談窓口は駆け込み寺となっている。道内の妊娠に悩む女性たちのための相談窓口「にんしんSOSほっかいどうサポートセンター」は相談することをためらう女性のため、匿名での相談を受け入れている。22年12月の開設から23年3月末までの4カ月で計471件の相談を受けたという。
センターを管轄する道子ども子育て支援課の担当者は「これだけの相談がきているが、道内に助けを求める女性はもっとたくさんいる。匿名でもよいので悩みがあれば一人で抱え込まず、相談してほしい」と呼びかける。
蓮田院長は「助けを求める女性からすると、身元を明かすことは一つ大きなハードルとなる。このような事件をなくすため、女性がより相談しやすい環境を整えることが大切。支援に匿名性が不可欠だ」と話した。
千歳の乳児遺棄 弁護側減刑訴え
出産した男児を殺害し、JR千歳駅のコインロッカーに遺棄したとして殺人罪などに問われた母親で住所不定の無職、小関彩乃被告(23)の控訴審初公判が27日、札幌高裁(成川洋司裁判長)であり、即日結審した。判決は5月23日。
弁護側は1審・札幌地裁判決(懲役5年)について「判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるのに加え、事実認定を前提としても量刑が重すぎて不当だ」と主張。懲役3年保護観察付き執行猶予が妥当だとして刑の軽減を訴えた。検察側は控訴棄却を求めた。
小関被告は被告人質問で「今後、グループホームで第三者の支援を積極的に受け、自立ができるようにがんばりたいと思っている。寝る前に手を合わせて、赤ちゃんへの思いを忘れず持ちたい」と述べた。【金将来】