岸田文雄首相は、統一地方選・衆参5補選を乗り切り、5月に広島市で開催するG7(先進7カ国)首脳会議に集中する。ロシアによるウクライナ侵略が長期化するなか、議長としてG7の結束を主導する。習近平国家主席率いる中国の武力侵攻である「台湾有事」もにらみ、抑止力や対処力の強化も急ぐ。安倍晋三元首相は生前、「台湾有事は日本有事。日米同盟の有事」と訴えたが、有事はわが国にどう波及するのか。元陸上自衛隊中部方面総監で、千葉科学大学客員教授の山下裕貴氏が核心に迫った。
台湾と沖縄県・与那国島の海峡は約110キロしかなく、日本と台湾の位置関係は極めて近い。東シナ海から太平洋に出るためには、この海峡を含めて日本の南西諸島周辺を通過する必要がある。中国の軍事戦略上重要な「第1列島線」である。さらに在日米軍基地は米軍の台湾支援の作戦基盤である。
ジョー・バイデン大統領が最高司令官を務める米軍が南西諸島周辺海域で作戦行動を開始し、要請があれば自衛隊は後方支援活動を行う。
この段階で「台湾有事」は「日本有事」になっている。次に事態が推移すれば「存立危機事態」へと進み、さらに事態が悪化し日本が攻撃されれば「武力攻撃事態」となる。
日本への波及は、「日本への直接波及」「台湾の行動により波及」「米軍の行動に関連して波及」の、3つが想定される。
まず、最初の「日本への直接波及」は、中国が第1列島線に近づく日米艦隊の接近阻止および、中国艦隊の太平洋への進出航路の安全確保(海上・航空優勢の確保など)を目的として、南西諸島の離島を拠点として確保する場合である。
ハイブリッド戦から行われる可能性があり、この場合には自衛隊は治安出動から武力攻撃事態に発展し、防衛出動を命じられて奪還作戦などを行う。日米安保による米軍の来援は、米国議会の承認が必要であり時間がかかる。そのため当面は自衛隊単独で戦わなければならない。
次に、「台湾の行動により波及」は、緒戦において台湾軍の残存艦艇および、航空機が日本へ避難してきた場合であり、受け入れた段階から「台湾有事」は日本に波及している。
この状況では、中国側からの人員・装備の返還要求があり、(当然だが)日本が返還しなかった場合には、最悪の場合に避難した装備を破壊するための攻撃が行われることも予想される。
蔡英文総統の台湾に米国を軍事的に参戦させるための積極的な方策があるとすれば、それは日本を巻き込み日米安保条約を発動させることである。