沖縄県の宮古島周辺で陸上自衛隊のヘリコプターが消息を絶った事故で、海底に沈んだ機体の主要部分が2日、26日ぶりに海上に姿を現した。フライトレコーダー(飛行記録装置)も回収されており、レーダーの機影消失地点から発見場所まで約4キロの空白の航跡を解明できるか注目される。
機体引き揚げは天候不良などにより2日連続で実施が見送られていた。2日朝、現場海域は一転して青空が広がり波も穏やか。陸自が委託した民間作業船2隻が作業を再開し、午前8時18分ごろに高性能カメラやロボットアームを備えた遠隔操作型無人潜水機(ROV)を海中に投入した。
午前11時45分ごろ、網に包まれた機体の一部が海面上に姿を現し、周囲をブルーシートで目張りされた甲板上に引き揚げられた。海上での機体確認は4月6日以来となる。船上では多くの作業員が様子を見守り、上空を報道ヘリが飛び交った。
機体を乗せた作業船は午後2時半ごろに、宮古島市の平良(ひらら)港に着岸。機体の周りを囲ったブルーシートの内外を自衛隊員らが出入りする様子が見られた。
機体は激しく損傷し、原形をとどめていなかった。引き揚げられた機体の映像を見た航空評論家の青木謙知(よしとも)氏は「海面に落ちた際に強い衝撃が加わり、機体が壊れたのだろう。今後は具体的にどこが壊れ、どこが壊れていないのかを調べることで、機体のどこから落ちたのかが分かるかもしれない」と推測する。
また、青木氏は「原因究明のためには、できるだけ多くの部品を引き揚げることが必要だ。証拠が多ければ多いほど何が起きたか分かる」と語った。
元陸将で陸自ヘリのパイロットも経験した山口昇・国際大教授は、回収されたフライトレコーダーの解析に期待する。「ヘリが飛行していた高度や速度、進行方向のデータが秒単位で残っているはずだ」と話す。
引き揚げられた機体は機影がレーダーから消失した地点の北側約4キロの海底で見つかった。山口氏は、海流などで流された可能性は低く、レーダーで捕捉できない低高度で移動した可能性が高いと指摘する。「4キロの飛行にかかる時間は1分程度。フライトレコーダーの解析などで、この間に何が起きたのかを明らかにする必要がある」と語った。【喜屋武真之介、島袋太輔】