1947年の日本国憲法の施行から76年となった「憲法記念日」の3日、各地で集会やイベントが開かれた。護憲派と改憲派の団体がそれぞれ、現行憲法の意義やこれからのあり方について訴えた。護憲派は防衛費増額の方針に「生活が苦しい中でおかしい」と声を上げ、改憲派はロシアのウクライナ侵攻などを引き合いに出して憲法改正の必要性を呼びかけた。新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが引き下げられるのを前に、会場には多くの参加者が集まった。
護憲派、防衛費増額「憲法を無視」
護憲を訴える市民グループなどは「あらたな戦前にさせない!守ろう平和といのちとくらし 2023憲法大集会」を東京都江東区で開いた。相手国のミサイル発射拠点などをたたく「反撃能力」(敵基地攻撃能力)保有の撤回やジェンダー平等社会の実現などをスローガンに掲げ、約2万5000人(主催者発表)が参加した。
政府は、昨年閣議決定した国家安全保障戦略に反撃能力の保有を明記し、防衛費を今後5年間で43兆円に増額する方針を決めた。集会では、こうした政府の動きについて室蘭工業大学の清末愛砂教授(憲法学)が「憲法を無視している」と批判。「逼迫(ひっぱく)している人々をあざ笑うかのように防衛費を優先する政治の愚劣さだ」と指摘した。
「東京タラレバ娘」などの著作がある漫画家の東村アキコさんは、ビデオメッセージを寄せた。美大生らが苦しい生活を送る中での防衛費増額を疑問視し、「いつもは政治的発言を控えていたが、あまりにおかしい」と呼びかけた。
東京都江戸川区の保育士、森かなさん(51)は「子どもを守り育てる環境こそ優先してつくるべきだ。憲法が守られていないと感じる」と話した。【斎藤文太郎】
改憲派「緊急事態条項」創設など求め
改憲を求める民間団体「美しい日本の憲法をつくる国民の会」などは、東京都千代田区で「公開憲法フォーラム」を開いた。岸田文雄首相がビデオメッセージを寄せたほか、大学教員ら有識者や元自衛官が講演。会場には約800人が集まり、オンライン配信では2万人近く(いずれも主催者発表)が視聴した。
講演では、多くの登壇者がロシアのウクライナ侵攻や北朝鮮の弾道ミサイル発射、災害や感染症の流行などの「危機」に言及。有事の対応を憲法に規定する「緊急事態条項」の創設などを訴えた。同会の桜井よしこ共同代表は「今の日本のあり方で国民の生命を守り通すことはできない。それが国民の実感だ」と述べ、「ただちに憲法改正に取り組んでほしい」と訴えた。
集会には国政4党の代表者も出席し、主催者側から改憲を求める声明文を受け取った。
会場を訪れた東京都江東区の無職女性(70)は、自衛隊を憲法に明記することが必要だと考えているという。「隊員は命を懸けて働いていながら、合憲か違憲かはっきりしないのは気の毒だ。堂々と任務を果たせるようにするには、憲法改正が必要だと思う」と話した。【黒川晋史】