余震続き眠れぬ夜「生き地獄のよう」「怖くて住んでいられない」

震度6強の激しい揺れから一夜明けた石川県 珠洲 (すず)市では6日朝、本格的な降雨を前に住民たちが後片付けを急いでいた。震度1以上の余震も51回発生し、多くの人が眠れぬ夜を過ごした。住宅被害が目立つ同市の正院町地区では、途方に暮れる住民の姿も見られた。
同地区のタクシー運転手の男性(68)の自宅では、母屋に隣接する2階建て納屋が倒壊した。築50年以上の納屋は1階部分が押しつぶされ、外からは屋根瓦しか確認できないほどの状態。自宅の玄関扉も割れて閉まらなくなったため、ブルーシートで雨をしのいでいる。男性は「中に入るのが怖い」と、自宅前に止めた車の中で一夜を過ごしたという。
6日午前8時頃に解体業者が到着し、屋根瓦を剥がしてトラックに積み込んだが、荷台は5分もたたないうちに瓦でいっぱいになった。男性は「納屋のがれきが道路を塞いでしまっている。家の中の片付けはその後だ」と話していた。
同地区で夫(72)と暮らす女性(71)は、2階建て住宅の1階部分を5日のうちに片付け、自宅で不安な一夜を明かした。電気とテレビをつけたまま、1階リビングのソファで横になったといい、「小さな地震でも目が覚めて、ほとんど眠れなかった。生き地獄のようです」と声を震わせた。
2階にはタンスの中身や倒れた鉢植えが散乱したままだが、「いつまた地震が来るかもわからないし、気力も起きないので、しばらくこのままにしておく」とうつむいた。

同地区に住む70歳代の両親らを案じて駆けつけた金沢市の会社員の男性(41)は、近くの正院公民館に家族とともに避難した。夜が明けて自宅に戻ると、割れたガラスなどで足の踏み場もなく、タンスがひっくり返っていた。男性は散らばったガラス片を軍手やほうきで拾い集め、「どこから手をつけたらいいのか……。一日で終わる気がしない」と肩を落とした。
能登地方は昨年6月にも最大震度6弱の揺れに見舞われており、男性の母(74)は「地震の度にこんなことになると、やっていられない。怖くて住んでいられず、若い人も出ていってしまう」とため息をついた。
正院公民館では5日夜から翌朝にかけ、一時近隣住民ら60人以上が避難し、テレビなどで最新の情報を確認しながら身を寄せ合った。小町康夫館長(68)によると、段ボール製の簡易ベッドや毛布のほか、水や食料が用意されたという。6日は午前4時半頃から外に出て体を伸ばしたり、自宅の様子を見に戻ったりする住民の姿が見られた。
同地区の無職男性(79)は地震で玄関のガラス戸8枚が全て割れ、6日早朝から片付けに追われた。朝から雨が降っていたが、ブルーシートを張る余裕もなく、家の中は泥だらけになってしまったという。7日に80歳を迎える男性は「家の中はめちゃくちゃ。傘寿のお祝いなのにひどいことになってしまった」と話した。
同地区の無職男性(81)も、崩れた石塀(高さ約1メートル)の片付けに追われた。「余震もあって夜はほとんど眠れなかった。塀は自分で直せないし、業者に頼んでもあちこちで被害が出ているからすぐには対応してくれない」と困惑していた。