新電力撤退で4320万円負担増、賠償提訴の大牟田市が全面勝訴…被告企業は解散決議

公共施設への電力供給契約を結んでいた新電力会社「ウエスト電力」(東京)の事業廃止に伴い、電気料金の負担が増えたとして、福岡県大牟田市が同社に約4320万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が12日、福岡地裁久留米支部であった。立川毅裁判長は市の請求通り、同社に全額の支払いを命じた。
訴状などによると、同市は2021年10月~22年9月、市庁舎や学校などへの電力供給契約を同社と結んだが、同社はロシアのウクライナ侵略による電力の市場価格高騰などを理由に事業からの撤退を表明。市は昨年4月末で契約を解除し、同5月以降、九州電力送配電から割高な料金で電力を購入する「最終保障供給」の利用を余儀なくされたとして、電気料金の負担増分などの支払いを求めた。
訴訟は、ロシアのウクライナ侵略などが不可抗力に当たるかどうかが争点となった。ウエスト電力側は「ロシアの侵攻で世界のエネルギー市場の混乱などが生じた。軍事侵攻は契約時には考慮できず、不可抗力に当たる」と主張。市側は「侵攻による不可抗力は交通が遮断され、物品輸送が不可能になるといった直接的な影響をいうと解される」などと反論していた。
ウエスト電力を巡っては、宮崎県日向市や鹿児島県大崎町、大阪府富田林市も損害賠償を求めて提訴している。判決は大牟田市が初めて。
一方、同社は4月28日に解散を決議し、特別清算の手続きを進めている。