北朝鮮から?無人木造船、鳥取の海岸に漂着相次ぐ…コロナ規制緩和で出漁増加か

鳥取県内の海岸に、北朝鮮のものとみられる無人の木造船や木片が相次いで漂着している。近年は年間0~2件で推移していたが、昨年は5件確認され、今年はすでに7件と急増。北朝鮮の専門家は、新型コロナウイルスの影響で控えていた漁船の出漁が、規制の緩和で増えたためではないかとみている。(林美佑)
第8管区海上保安本部などによると、県内への木造船や木片の漂着は、2016~21年は年間2件以下で、17、18、21年は0件だった。ところが22年は年間で5件、23年はすでに7件確認されている。7件は2~3月にいずれも県東部の鳥取市と岩美町で見つかり、2月には鳥取市伏野の海岸に長さ5メートルを超す木造船が漂着した。
これまでに漂着した船や木片にはすべて、コールタールのようなものが塗られていた。北朝鮮の政治外交に詳しい島根県立大学の福原裕二教授(朝鮮半島地域研究)によると、コールタールは木造船の強度を高めるためや、防水のために塗るといい、原料となる石炭が豊富な北朝鮮の木造船の特徴という。
木造船を含む北朝鮮の漁船は日本海の好漁場「大和堆(やまとたい)」で多く確認されている。日本の排他的経済水域(EEZ)内にあり、水深が深くてイカやカニがとれることで知られる。福原教授は「さらなるお金を稼ごうと沿岸漁業用の木造船で、危険を冒して大和堆に出てきて難破するケースがある」と指摘する。イカやカニは秋や冬にとれる一方、日本海はよく荒れ、難破後に北西からの季節風にのせられて日本海側に漂着するのではないかとみている。
全国では木造船・木片の漂着は、18年には225件を記録したが、コロナ禍の20年は77件、21年は18件にとどまった。しかし22年は49件に増え、今年は今月12日までに17件あった。
水産庁によると、大和堆周辺での北朝鮮の漁船の違法操業に対する退去警告件数は18年が5201件、19年が4007件あったが、コロナ禍の20年は1件、21年は0件に激減。一方、22年は19件と増加に転じた。福原教授は「医療資源の少ない北朝鮮はコロナ下で徹底した感染対策を取り、出漁をさせていなかったが、22年春から緩和したことが関係しているのではないか」と話す。
鳥取海上保安署の高住博文署長は「木造船や木片は、くぎが飛び出ていることがあり危ない。見つけたら触らずに通報してほしい」と呼びかけている。

全国では、北朝鮮から漂流・漂着したとみられる木造船から生存者や遺体が見つかった例がある。
19年には島根県隠岐の島町に木造船が漂着し、乗っていた男性4人が保護された。第8管区海上保安本部などによると、全国で漂着した木造船から17年は35人、18年は14人、19年は5人の遺体が見つかった。生存者も17年は42人確認された。20年以降は生存者や遺体が見つかるケースはない。