19日に広島市で開幕する先進7か国首脳会議(G7サミット)の警備態勢は、地元・広島県警に全国の警察の応援を加えて過去最大の規模となる。2016年にオバマ米大統領(当時)が広島を訪問した際の4600人を優に超え、同年のG7伊勢志摩サミットの2万3000人よりも多くなるとみられている。(広島総局・岡大賀、写真も)
全国から警察官、パトカーが集まる
広島市内を歩くと、北は北海道警から南は沖縄県警まで、全国各地の警察車両を目にする。パトカーはもちろん、機動隊のバスも街中でよく見かけ、ふだん取材で出入りする裁判所や検察庁の敷地に警察車両が駐車されるようになった。
サミット初日に岸田首相夫妻がG7首脳夫妻を出迎える平和記念公園の周辺では、昼夜を問わず、多くの警察官が、異変がないか目を光らせている。実際に公園を歩いてみると、常時数十人はいるだろうか。各県警でローテーションを組んでいるようで、記者が訪ねた日には、福島県警と兵庫県警の警察官が警備を交代する様子も見られた。
原爆死没者慰霊碑や原爆の子の像付近などだけでなく、茂みも注意深く見ながら巡回する。ふだん段とは違う光景に、サミットが近づいていることを実感させられる。
県警幹部によると、2か月前から市内中心部の警備態勢を強化しているという。現役の警察官に加え、OBも警備に携わる。県警は、OBらでつくる「警友会」と協定を結び、サミット期間中に約50人が警戒に当たる予定だ。
「一つ一つに危機感を持って対応する」
4月下旬、JR広島駅(広島市南区)の商業施設内のトイレで不審な紙袋が見つかった。県警の爆発物処理班が出動し、山陽新幹線も運転を見合わせるなど、一時、騒然とした。結果的に忘れ物と判明したが、以来、駅構内に警察官が増えた。
また、今月9日には同市中区の高校付近で、10日には平和記念公園内で、不審物がある、との通報があった。いずれも周辺に規制線が張られ、一帯は物々しい雰囲気に包まれた。その後、中身は衣類や洋菓子とわかった。
何ごともなく、取材する側としては一安心したが、県警幹部の「慣れが一番怖い」という一言に、はっとさせられた。「いつテロが起こるのかわからない。一つ一つの事象に対し、危機感を持って対応する」という県警の緊張感を象徴する言葉だった。