事業断念や規模縮小の「不用額」2237億円…豪雨など緊急対策、内閣官房も国交省も把握せず

会計検査院は17日、政府が防災・減災などの国土 強靱 (きょうじん)化に向けて2018年度から実施した緊急対策についての報告書を公表した。検査院は、事業の総合調整を担う内閣官房が国費支出の全体額を集計せず、国土交通省など5省はそれぞれ支出額を正確に把握していなかったと指摘し、改善を求めた。
政府は14年、長期的な防災・減災対策の指針となる「国土強靱化基本計画」を閣議決定。18年の西日本豪雨や北海道 胆振 (いぶり)東部地震などを受け、同年末に事業規模が約7兆円の「3か年緊急対策」を決めた。土砂災害や地震の被害防止、エネルギー供給確保など7項目計160対策からなり、地方自治体への交付金や補助金など国費の支出は3兆円台半ばと見込まれていた。
検査院は18~20年度と、21年度に繰り越し実施された事業を対象に検査。その結果、内閣官房国土強靱化推進室は国の支出額を各省庁などから報告させず、全体額を集計していなかった。また国交、法務、文部科学、厚生労働、農林水産の5省の計69対策で、各省が支出額を把握していなかった。
検査院が各省庁などから集計したところ、国の予算総額3兆6790億円に対し、支出額は3兆4271億円だった。事業の断念や規模縮小による「不用額」は2237億円だった。
同室は取材に対し、「支出額を把握するには、政府の地方機関や自治体、補助金を拠出した事業者に確認する必要があり、業務負担になると考えた。透明性の確保とわかりやすい説明を心がけたい」とした。