テロ対策の不備で東京電力柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)に出している事実上の運転禁止命令について、原子力規制委員会は17日、解除しないことを決めた。東電の再発防止の取り組みを検査した結果、侵入者に対する監視体制などで是正が不十分と判断した。同原発については、岸田首相が今夏以降の再稼働を目指す方針を表明していたが、早期の再稼働は困難な見通しとなり、東電管内の電力需給は今年も綱渡りの状態が続きそうだ。
規制委事務局の原子力規制庁はこの日午前の定例会合で、東電に改善を求めた27項目のうち4項目で是正されていないとする報告書を提出した。荒天時の監視体制が不十分で、警報の誤作動も目標以下に減らなかった。協力会社を含めたテロ対策に関する議論や情報共有も低調で、マニュアルの変更がルール通り行われていないことがあった。
報告書をもとに、規制委は同原発の運転禁止命令解除の可否を議論。5人の委員からは「荒天時の監視は難しいが、東電だけが厳しい環境というわけではない」などの意見があり、運転禁止命令を解除せず、検査を継続することを決めた。
規制委は今後、東電から4項目について取り組みの報告を求める。規制庁の検査で是正されたと確認できれば、改めて命令を解除できるかどうか判断する。
同原発では2021年1月、所員が他人のIDカードで中央制御室に不正入室する問題が発覚。さらに、不審者の侵入検知装置が故障していたのに十分な対策を取っていなかった不祥事も明らかになった。規制委は同年4月、同原発に対して運転禁止命令を出し、東電の再発防止の取り組みを検査していた。
岸田首相は昨年8月、電力の安定供給や脱炭素の推進のため、これまで再稼働した原発10基に加え、今夏以降に柏崎刈羽原発を含む7基の再稼働を目指す方針を表明した。
電力の安定供給には、需要に対して3%ほど供給の余力(予備率)が必要とされる。今年3月時点の予想では、東電管内の7月の予備率は3%ぎりぎりで、暖房需要が高まる来年1月も4・6%にとどまる。
◆柏崎刈羽原子力発電所=原子炉7基を持つ世界最大級(総出力821万2000キロ・ワット)の原発。6、7号機(各136万キロ・ワット)が2017年12月、規制委の安全審査に「合格」した。1~5号機は、東京電力が一部の廃炉の可能性に言及している。