大阪府熊取町で平成15年5月、小学4年だった吉川友梨さん(29)が行方不明となった事件は、20日で発生から丸20年となる。直前まで一緒に下校していた同級生3人は今も友梨さんとの再会を待ち続ける。初めてそろって取材に応じた3人は、薄れゆく記憶に複雑な思いを抱えつつ、「どんな大人になっているのだろう。友梨と会いたい。ただそれだけです」と胸の内を語った。
「帰り道にじゃんけんして遊んだなあ」。大型連休中の今月5日、3人は友梨さんと歩いた通学路を懐かしみながら歩いた。薄暗く怖かった竹やぶや、じゃんけんしながら進んだブロックの道。20年前のおぼろげな記憶が色を帯びるのに時間はかからなかった。
下校時は苦手な宿題の話や、気になる男子の話もした。「好きな人をしつこく聞いて怒られたこともあったな」。今は東京で会社員となっている同級生、みさとさん(29)=姓は非公表=は笑う。
「バイバーイ」。同町七山(しちやま)の交差点から声を掛けると、友梨さんは振り返り細く白い腕を振ってくれた。坂道のカーブで姿が見えなくなるまで見送った。ただ、その記憶はあいまいだ。「だって最後と思っていたわけじゃない」。3人のうちの一人はこうつぶやく。
優しく、よく笑う子だった。自宅に遊びに行くとピアノや電子オルガンを演奏してくれた。愛犬をかわいがっていた。楽しかった時間が多かっただけに、事件後の教室の空席に胸が締め付けられた。
時間とともに3人とも胸の痛みは落ち着いたが、薄れゆく記憶に罪悪感を感じている。当時の友梨さんを思い出そうとすると、ニュースや情報提供のチラシに載った顔写真ばかりが思い浮かぶようになった。
「一緒に過ごした日々が幻だったような気もする」。だから早く友梨さんに会いたい。3人は友梨さんにこう呼び掛ける。
「何とかして生きていることを教えてほしい」(中井芳野)
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友梨さんに関する情報提供は大阪府警泉佐野署捜査本部(072・464・1234)、メール(yuri@police.pref.osaka.jp)。