マッチングアプリで知り合った就職活動中の女子大学生や、女性会社員らに睡眠作用のある薬物を飲ませて性的暴行を加えたとして、準強制性交等や住居侵入などの罪に問われているリクルートコミュニケーションズ元社員・丸田憲司朗被告に対する公判が5月15日、東京地裁で開かれた。
丸田被告は30歳だった2020年11月に逮捕されたのち、再逮捕が続き、最終的には10人の女性に対する準強制性交等、住居侵入、準強姦、準強制性交等未遂、準強制わいせつで起訴されている。手口は共通しており、被害者の飲食物に睡眠薬を混入させたうえ、抗拒不能となった被害者に対し、性交やわいせつ行為に及んでいたという。
犯行時の様子を動画撮影しており、このとき被害者らの身分証も記録していた。就職活動中の女子大学生とは就活マッチングアプリで知り合い、「課題手伝おうか?」などと声をかけ、資料作成のアドバイスを行なうなど“頼れる先輩”を装いながら犯行を重ねていた。
被害者らの氏名は伏せられ、アルファベットでA~Jさんと呼ばれている。5月15日の公判では、そのうち7名が、衝立の奥から、あるいは代理人弁護士による代読の形で「重い刑罰を望む」などの意見を陳述した。丸田被告はグレーのスーツを着用し、濡れ感のあるセンター分けヘアというフォーマルなビジュアルで弁護人の前の長椅子に座り、これを聞いていた。マスクをかけていたが、時折眉をひそめたり目をきつく閉じたりと目元は雄弁だった。
今春、丸田被告は被害者らに手紙を送っていたというが、目を通した被害者は「反省が見られない」と一蹴していた。被害に遭ったBさんが公判でその手紙の内容を明かした。
〈傷つけてしまって本当にごめんね。俺なんかと話したくないだろうけど、手紙や面会、もちろんいつでも対応します。俺なんかが言うなって感じだけど、体調大丈夫? 俺のせいでほんとにごめんね〉(丸田被告からの手紙)
事件を起こしたと思えぬような軽い文面の手紙を受け取ったBさんは「読んでがっかりした。見下されている。大目に見てくれると思っているように見える。また会えると思っているようだが、そのように考えていることが信じられない」と陳述。Gさんも「苦しみを理解していると思えることが一切書いていない」と続けた。
大学2年生当時、就活アプリで知り合った丸田被告に食事に誘われたIさんは、バーで被告からカクテルを飲み干すように勧められ、飲み干した後にいきなり意識を失った。一杯しか飲んでいなかったにもかかわらず、長時間意識を失っていたことから、被告が睡眠薬を盛ったのではないかと疑っていた。その後、被告の逮捕をニュースで知り、Iさん自身も警察に被害を申告したという。
そんなIさんのもとに被告から届いた手紙には〈監禁生活の2年半、全て失った。生き地獄だ〉などと書かれており「まるで被告人が被害者を責め立てているように感じて怒り心頭。生き地獄は、何も悪いことをしていないのに被害に遭った私のほうです」と怒りをあらわにした。
被告は被告人質問において“母や過去の交際相手から酷い仕打ちを受けた”ことが事件の遠因であるかのような証言をしていたが、Iさんはそれにも「百歩譲ったとしても事件と結びつかないし私に関係ありません」と述べ、最後に言った。
「できるだけ重い刑にしてほしいです。一生刑務所から出さないでほしい」(Iさんの陳述)
◆取材・文/高橋ユキ(フリーライター)