―[言論ストロングスタイル]― ◆“即死”のシナリオを避け続ける岸田内閣 まだ岸田内閣成立から、たったの1年8か月。多くの人は、何があったか、忘れているだろう。 岸田文雄首相は、自民党総裁選に勝利し、衆議院の首班指名で自民党と公明党の支持により総理大臣に選出された。直後に衆議院を解散、自民党は20議席ほど減らしたが、与党は安定過半数を確保、続投となった。 そして参議院選挙で勝利。3年間は選挙を考えなくて良い「黄金の3年間」が到来すると思われていたが、安倍晋三元首相の暗殺を機に、旧統一教会の問題が再燃、政権は揺れ続けた。 それでも選挙で勝っている以上は誰も引きずりおろせず、一時は低下した支持率も回復。本欄が選挙以上に重要だと指摘し続けた日本銀行総裁人事でも、“即死”のシナリオは避け、今のところ景気回復路線を続けているので、経済は安泰。支持率が劇的に下がる心配はない。 そうした状況の中で、先日の衆参補欠選挙と統一地方選を迎えた。国会議員の補欠選挙は、昔は1人の欠員が出るたびに行われたが、補選のたびに政権が審判されるように扱われるのはかなわんと、半年に1度となった。 今回は、5つの補選が行われたが、自民党から見て4勝1敗。しかし、薄氷の勝利の連続だった。 ◆楽勝かと思いきや肉薄した衆参補欠選挙 安倍元首相の死亡で行われた山口4区。ここはトリプルスコアで勝ってもおかしくないところ、ダブルスコアでしか勝てなかった。 岸信夫元防衛大臣の病気で、山口2区に息子の信千代氏が出馬。楽勝と思われたが、平岡秀夫元法相が引退状態だったのに出馬。肉薄した。 千葉5区は自民党前職の薗浦健太郎元外務副大臣が「政治とカネ」の問題で議員辞職。立憲民主党・日本維新の会・日本共産党・国民民主党の主要野党のすべてが候補者を擁立。楽勝かと思いきや、大接戦で自民党の英利アルフィヤ氏が勝利。 参議院大分選挙区は、野党系現職の知事選出馬に対し、立憲民主党は元社民党委員長の吉田忠智氏を擁立。背水の陣で臨んだが、大激戦の末に自民党の白坂亜紀氏が341票差で勝利した。 和歌山1区は、前職の岸本周平氏の知事転出により、複雑怪奇な構図となった。自民党同士の足の引っ張り合いの末、元職で岸本氏に敗れ続けた門博文氏を公認。ここに日本維新の会は、林佑美氏をぶつけ、勝利した。 次の総選挙で再び門氏が自民党公認を得られるようこの世で最も願っているのは、林氏だろう。和歌山1区の公認を狙っている自民党有力者は、だれもが門氏より強敵なのだから。