原子力規制委員会は24日の定例会で、日本原子力研究開発機構の高速実験炉「常陽」(茨城県)が新規制基準に適合したことを示す審査書案を了承した。事実上の審査通過で、規制委は意見公募などを経て審査書を正式に決定する。
常陽は、プルトニウムとウランを混ぜたMOX燃料をナトリウムで冷やす研究炉で、発電機能はない。1977年に運転を始めたが、2007年に炉内の装置が破損するトラブルを起こし、15年以上停止している。
原子力機構は17年、再稼働の前提となる安全審査を規制委に申請した。しかし避難計画の策定などを巡って原子炉の熱出力を14万キロワットから10万キロワットに縮小するなど、審査は長期化した。山中伸介委員長は「非常に長い時間がかかった印象。実験炉であっても、ナトリウムを使った高速炉で、出力も大きい。かなり慎重に審査したつもりだ」と述べた。
高速炉は、政府が進める核燃料サイクルの中核となる施設だ。使用済み核燃料を再処理してできるプルトニウムを、既存の原発で燃やすプルサーマルよりも効率よく消費できる。
政府は22年12月にまとめた原子力政策で、既存原発から建て替える次世代原発の一つに、高速炉を位置付けた。原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)を高速炉で燃やして減らす研究なども進めるとしている。
しかし、常陽の次の段階である原子力機構の原型炉「もんじゅ」(福井県)は不祥事やトラブルで16年に廃炉が決まり、開発は難航している。現状では常陽が国内唯一の高速炉だ。原子力機構は25年3月の再稼働を目指すが、高速炉の開発が今後、順調に進むかは未知数だ。【高橋由衣】