タイで禁錮50年判決、日本移送の男性「現地の恩赦反映なく8か月長く服役」…国賠提訴へ

タイ滞在中に薬物事件で逮捕されて受刑し、国際受刑者移送制度に基づき、日本の刑務所に移送された元受刑者の介護施設職員の男性(61)(大阪府東大阪市)が、「タイの恩赦で刑期が短縮されたのに、日本の刑務所のミスで8か月長く収容された」として、国に550万円の損害賠償を求めて近く大阪地裁に提訴する。
法務省によると、タイにいる日本人の受刑者は▽両国と本人が移送に同意している▽犯罪が日本の法律でも罪になる▽刑期が1年以上残っている――などの条件を満たせば、日本に移送される。
訴状によると、男性は1999年、タイでヘロインの営利目的所持容疑で逮捕され、2002年に現地の裁判所で禁錮50年の刑を言い渡されて確定。18年12月に移送制度で帰国し、甲府刑務所(甲府市)に収容された。男性は2度恩赦を受けており、同刑務所から「刑期満了は27年」と説明された。
その後、男性がタイの矯正機関に書面で問い合わせたところ、21年4月に「20年8月の恩赦で刑期は終了した」との回答があった。同刑務所に伝えると、4月末に出所が許された。

男性側は「不当な身体拘束を受けた」と主張。代理人の田中俊弁護士(大阪弁護士会)は「両国間の情報共有に問題があった可能性がある」と指摘する。
法務省は取材に、一般的に外国から恩赦など減刑の通知があれば、国内での受刑期間を変更するとし、「刑期は受刑者にとって最大の関心事で、かなり慎重に計算している」と説明。今回のケースについては「個別の事案については答えられない」とした。

◆国際受刑者移送制度=外国で刑務所に入った受刑者を母国に引き渡し、残りの刑を母国で執行させる国際的な制度。1980年代に多国間条約ができ、日本は2003年に加入した。加わっていないタイなどとは2国間条約を結んでいる。法務省によると、03年~21年末で日本から480人、外国から10人の移送が行われた。