5月21日に閉幕した広島でのG7サミット(先進7カ国首脳会議)では、国際メディアセンターに世界中から5000人といわれる記者が集結していた。筆者はアメリカのメディアが派遣したチームに参加して開幕前日の18日から最終日の21日までこのセンターに通い、10カ国以上のメディア記者と意見交換した。
ゼレンスキー氏の動向に最大限の注意
メディアセンターが一番沸いたのは、間違いなくゼレンスキー大統領が広島空港に着いた瞬間だ。多くの記者がテレビスクリーン前に集合し釘付けになっていた。メキシコ人記者は今回のサミットを振り返って「ウクライナ関連の議論は良かったと思う」と率直に評価していた。ゼレンスキー氏は今回のサミットの表の主役と言っていいだろう。
メディアセンターでは、5月19日のG7の開幕とほぼ時を同じくして「ウクライナのゼレンスキー大統領が訪日し対面で会議に出席するらしい」という情報が駆け巡り、多くの記者がゼレンスキー氏の動向に最大限の注意を払っていた。
「ゼレンスキー氏がインドのモディ首相と握手すると絵になるね」といった期待も耳にしたし、ある記者は、ゼレンスキー氏が乗っていると思われる飛行機のフライト情報をパソコン画面いっぱいに映し出し、その動きを随時追っていた。
なおメディアセンターには数は少ないもののロシア人の記者もいた。そのうちの一人は、スクリーンに映るG7首脳が厳島神社を訪ねる様子を冷ややかに見ていた。
彼女からすると「この人たちは世界を良くしようとしているのではなく、自分たちの人気とりを考えているだけ」なのだそうだ。そして自分は「サミットの成果を事実としてそのまま淡々と報道している」と主張していた。
今回の表の主役がゼレンスキー氏だとすれば、影の主役は、その影響力増大から昨今注目を集める「グローバルサウス」(南半球に多いアジアやアフリカなどの新興国・途上国の総称)と中国だろう。実際、記者にサミットの注目点を聞くと、返ってきた答えの多くがこの2つのテーマに集中した。
会場で顔なじみであるイギリスの「エコノミスト」誌の東京特派員にばったり会った。彼には、今回のサミットにおけるグローバルサウスへの関与は不十分に映ったようだ。「インドやインドネシアは今回広島に来て何かを得ただろうか?」と話し、気候変動対策やグローバルヘルスといった分野でもっと新興国に実利を与えるべきだったと話していた。
バングラデシュメディアのベテラン東京特派員は、G7が示した「グローバルサウスへの関与強化」という姿勢に批判的な見方をしていた。