東京地検特捜部は5月18日、自社株を巡る金融商品取引法違反(取引推奨)の疑いで、「アイ・アールジャパンホールディングス」元代表取締役副社長の栗尾拓滋容疑者(56)を逮捕した。
「2021年4月、業績予想を下方修正すると社内で決まった直後、損失を回避させる目的で、知人2人にIRジャパン株の売却を勧めた疑いです。実際、2人は業績悪化の公表直前に、保有株を購入時の数倍以上の計約1億8000万円で売り抜けました」(社会部記者)
東証プライム上場のIRジャパン。物言う株主への対応などを手掛け、“上場企業の守護神”と呼ばれてきた。最近は急速に事業を拡大。2019年からの2年間で株価は約10倍に膨れ上がっていた。
「その立役者こそが、栗尾です。野村證券で法人営業などを経験した後、13年にIRジャパンに入社した。企業コンサルティングの専門家として、創業者の寺下史郎社長に引き抜かれました」(同社関係者)
野村出身らしくイケイケの営業姿勢で知られていたというが、時にはルールを逸脱することもあった。
「新聞輪転機メーカー『東京機械製作所』が21年、中国系投資企業『アジア開発キャピタル』に買収を仕掛けられた際、IRジャパンは東京機械の防衛アドバイザーになりました。ところがアジア開発に買収を仕掛けるよう裏で提案していたのが、栗尾だったのです。要は、喧嘩を仕掛けて用心棒役を買って出たようなもの。利益相反の“マッチポンプ”でした」(同前)
これに激怒したのが、東京機械の大株主、読売新聞の山口寿一社長だ。
「山口氏は今年5月1日、一連の問題を報じたダイヤモンド・オンラインに長文の論文を寄稿。『違法な手法による乗っ取りをそそのかしたのですから、栗尾氏の行為は相当悪質』と強い筆致で非難しました」(同前)
株を売るよう勧めた「知人2人」との関係は…
危ない橋を渡っていた栗尾。随分羽振りの良い生活を送ってきたという。
「役員報酬は数千万円だったと見られますが、昨年までは六本木の超高級タワマンを自宅としていました。夜の銀座でも湯水のようにカネを使っていた。IRジャパンが公表した調査報告書でも、『役職員の中では最も接待交際費が高額』ながら『使途について十分管理されていなかった』などと指摘されています。愛嬌があって座持ちも良いので、ホステスからは人気だったようです」(同前)
実は今回、株を売るよう勧めた「知人2人」も、
「1人は銀座のホステスです。もう1人は関西の一般女性で、いずれも愛人関係にあったと見られている。彼女たちにインサイダー情報を伝え、便宜を図った形です」(捜査関係者)
栗尾は調べに対し、容疑を大筋認めているという。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年6月1日号)