東京大の鳥海不二夫教授(計算社会科学)と、慶応大の山本龍彦教授(憲法学)らは29日、情報空間に対する共同提言「健全な言論プラットフォームに向けてver2・0―情報的健康を、実装へ」を発表した。昨年1月に公表した第1版に、生成AI(人工知能)がもたらす問題などを加筆した。
新たな提言では、生成AIについて「インターネット上のいかなるデータが使用されたか不明のまま、生成された文章が拡散される危険がある」と強調。その回答はもっともらしく見えるため、「『おいしい毒 林檎 (りんご)』として情報的な『健康』を侵害しうる」とした。
通信・広告事業者が果たすべき役割や、教育・リテラシーのあり方にも言及した。
提言を社会に実装する手立ても詳しく紹介し、ユーザーの「情報的健康」の程度を測定するシステムの構築や、リテラシー教材の開発などを示した。
前回の提言は「デジタル・ダイエット宣言」という副題を付け、フェイクニュースや、好みの情報ばかりに包まれる「フィルターバブル」などの問題を指摘。多様な情報を摂取することで、フェイクニュースなどに対する免疫を獲得した状態である「情報的健康」の重要性を訴えた。
第2版にあたる今回は、鳥海、山本両教授に加え、言語脳科学者の酒井邦嘉・東大教授など関連分野の識者ら16人が共同執筆者に名を連ねている。
代表の一人である山本教授は「日本だけでなく世界に向けて情報的健康の概念をPRしていきたい」と話した。