原発活用GX法、福島から落胆・憤り 「事故被害者を蚊帳の外」

原発の60年超運転を可能にするなど原発活用を推進するGX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法が31日に成立したことに対し、東京電力福島第1原発事故で大きな被害があった福島県からは「蚊帳の外に置かれている」「安全性に問題がないと誰が保証するのか」などと落胆や憤りの声が聞かれた。
経済産業省は1~3月に全国10カ所で説明・意見交換会を開いたが、福島県で開催されることはなかった。このため、元福島大学長の今野順夫(としお)さん(79)ら同大の名誉教授らが中心となって5月下旬、公聴会開催を求める要望書を参議院経済産業委員会委員長に宛てて提出していた。要望書では「原発事故の被害を受け続けてきた福島県民にすら法案に関する説明や意見聴取が行われていない」と指摘していた。
今野さんは法案成立を受けて「原子力政策の大きな転換となるにもかかわらず被害者を置き去りにし、蚊帳の外に置かれていると感じる。原発は技術的に確信を持てるレベルにはなく、人には制御しきれない。安全を最優先するのであれば(原発の活用を)慎重に考えるべきだ」と訴えた。
原発事故により一時全域が避難指示区域に入った福島県南相馬市小高区で行政区長を務める林勝典さん(76)は「法案に反対するなら『電力が不足した時に文句を言うな』と言われているように感じる」と憤りを隠さない。
原発事故の教訓から「原則40年、最長で延長20年」とされた運転期間が60年を超えて可能となることについても「数十年も前の設計基準で建設された原発は、検査で問題がないとされたとしても本当に大丈夫なのか。継続して問題がないと誰が保証するのか」と疑問を投げかけた。【肥沼直寛】