生活が苦しくとも誰にも相談できない――。そんな孤独を抱えながら貧困に苦しむ中高年が増えている。特に同居家族がいない独居中高年の場合、身近に助けを求められる人すらいなく、苦しい状況を一人で抱えたまま心を病んでしまう人もいる。中高年を襲う孤独と貧困の実情に迫った。 ◆中高年を誘う「闇バイトスカウト」の罠 困窮する中高年への闇バイト勧誘が広がり続けている。’23年2月には84歳の男性が大阪府内に住む高齢女性から380万円を騙し取ったとして逮捕された。容疑者はギャンブルで借金があり、SNSで闇バイトを知って一味に加わったという。 自ら詐欺グループへの取材を行うジャーナリストの多田文明氏は、「若者よりも中年のほうが詐欺グループから重宝される」と話す。 「現在は特殊詐欺だけでなく、強盗犯罪の実行犯も闇バイトとして募集がかけられています。“タタキ”と呼ばれる強盗メンバーは若者を中心にリクルートされる半面、中年に対しては主に受け子やATMから現金を引き出す“出し子”役が与えられる。 それらは真っ先に捕まるので常に人手不足だし、詐欺犯からすれば中年のほうが信用できるのです。若者のなかには警察官役でもサンダルで現場に行くといったいい加減な人もいるのに対し、『社会人経験がある中年はマジメにやる』と詐欺犯が話していました」 ◆生活困窮者を懐柔するマニュアルも 生活困窮者を懐柔する方法もマニュアル化されている。 「今ではリクルーターと呼ばれるヤツらも詐欺経験5年以上のベテランが多く、丸め込むのはお手の物です。相手の借金状況を親身になって聞き出し『大変だったね』などと優しい言葉をかける。 また、受け子の仕事は顔見知りに会うなどのトラブルを避けるため、あえて遠方に住む人を引っ張ってきます。その際にも『宿泊費や交通費はこちらで出すから安心してください』などと伝える。 そのように親切さや心配する態度を見せられることで、お金に困った人などは大抵がコロッと騙されてしまうのです」 ◆闇バイトが生活困窮者の受け皿に… 特殊詐欺の認知件数と被害額は減少傾向だったが、’22年には増加に転じている。 「コロナ禍の生活苦で借金を重ねる人が増えた影響はあるでしょう。だからリスクを知りつつも闇バイトをする人が後を絶たない。生活に困窮した人たちの受け皿のひとつになってしまっているわけです」 ◆若者だけでなく40~50代も 生活困窮者を支援する認定NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」の大西連氏は、「闇バイトで逮捕され、出所後も社会復帰が難しい人からの相談は多い」と話す。