性犯罪規定見直す刑法改正案 「廃案許されない」弁護士ら訴え

性犯罪規定を見直した刑法などの改正案が参院で審議入りしていないことに関連し、性暴力の被害者を支援する弁護士や当事者団体は2日に記者会見を開き、「時間切れで廃案はあってはならない」と今国会での成立を求めた。【菅野蘭】
刑法などの改正案は、5月30日に衆院本会議で全会一致で可決され、衆院を通過した。通常国会の会期末は6月21日だが、参院では入管法改正案の審議が紛糾しており、このまま刑法などの改正案が審議入りできずに廃案になる恐れがある。
入管法改正案を巡っては、立憲民主党が1日、参院法務委員会の杉久武委員長(公明党)に対する解任決議案を参院に提出した。委員長が入管法改正案採決を決めたことに反発したためで、採決は先送りされた。
記者会見では、犯罪被害者支援弁護士フォーラムの高橋正人事務局長が「入管法改正案の審議が紛糾することに巻き込まれ、刑法改正案が廃案になるのは暴挙だ」と訴えた。
今回の改正案では、強制性交等罪と準強制性交等罪を統合して「不同意性交等罪」へと罪名を改称することが盛り込まれている。
現行法では、被害者の抵抗を著しく困難にさせる「暴行や脅迫」があったことなどが成立要件とされるが、判断基準があいまいとの指摘があった。
改正案では成立要件に「経済的、社会的関係上の地位に基づく影響力による不利益の憂慮」などを加えた8項目を例示し、処罰対象を明確にした。
フォーラムの上谷さくら弁護士は、ジャニーズ事務所の前社長、ジャニー喜多川氏(2019年死去)による性加害疑惑についても言及。「権力関係を背景にしたいわゆる『手なずけ』行為に基づく性虐待は日常的に起きている。廃案になるということは、国は子どもや性犯罪の被害者を見捨てるという意思だと私は受け止める。時間切れによる廃案はあり得ない」と話した。