台風や前線の影響による大雨で、和歌山県内の被害の全容が徐々に判明しつつある。県は5日、住宅の床上浸水が609棟、床下浸水が1461棟に上ったと発表した。県には農林水産業での被害や、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の高野参詣道の崩落情報も寄せられている。県や市町村が被害確認を進めていて、被害はさらに拡大する恐れもある。【加藤敦久、安西李姫、藤原弘】
県によると、住宅の浸水被害は5市12町に及んでいる。床上浸水は海南市393棟▽有田市106棟▽湯浅町30棟▽紀美野町23棟――などで、床下浸水は海南市851棟▽有田市278棟▽湯浅町71棟――などとなっている。紀美野町、九度山町、高野町で計5棟の全壊も確認された。また、紀の川市と紀美野町で川に流された男女計2人について、消防などは行方不明から72時間が経過したことなどを踏まえ、5日で捜索を打ち切った。
岸本周平知事は5日午後、被災したウメやミカンの畑、浸水地域などを視察した。有田川町では、縦約130メートル、最大幅約20メートルの斜面が崩れたミカン畑の災害現場を訪れた。約1ヘクタールの畑の中央部の木々が倒れて地面がむき出しになっており、果樹の被害の他、収穫の運搬ルートや薬剤散布などのパイプが寸断されて今後の作業の見通しが立たなくなっているという。ミカン農家の嶋田光宏さん(40)は「地元産業を守るためにも早急に復旧できるようにしてほしい」と訴え、岸本知事は「できるだけの対応をしたい」と答えていた。
県は同日、海南市に災害救助法の適用を決定。地元自治体には、避難所の設置や住宅の応急修理を国、県が費用負担するなどのメリットがあるという。
文化財の被害も判明している。海南市下津町上の長保寺では2日午後、裏山で崖崩れが発生し、1311年建立された本堂に木や土砂が流れ込んだ。長保寺は本堂・塔・大門が国宝、敷地全体が国の史跡に指定されていて、復旧作業は文化庁などの方針決定を待つという。
同寺の法嗣(はっす)・瑞樹弘芳さん(38)は「過去の歴史や記録では大きな被害はなかった。災害に強い場所だからこそ、国宝として守ってこられた」と説明。復旧作業の方針が決まるまでは業者への依頼などができず、「裏山は現在も危険な状態。また雨が降ったらどうなるか分からない」と危機感を募らせた。
現在境内は立ち入り禁止としており、同寺は完全な復旧まで2~3年ほどがかかると見込んでいる。5日には県や市の職員が訪れ、現地調査に当たった。
また県教委によると、5日時点で、長保寺を含む計9件の文化財の被害情報が寄せられている。世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の高野参詣道でも道が崩落したなどの情報があり、県などが確認を進めている。
運転再開に1週間程度が見込まれているJR和歌山線の橋本―粉河間。橋本市の橋本駅周辺では、JR和歌山線の代替バスが定期的に発着し、5日午後の下校時間帯にはバスを待つ高校生らの姿が見られた。高校1年の女子生徒は「バスは時間がかかるので、朝はいつもより40分早く家を出た」と話していた。