東京・秋葉原で7人が死亡し、10人が重軽傷を負った無差別殺傷事件から8日で15年。現場となった交差点には、多くの人が花束を供えるなどして犠牲者を悼んだ。昨年7月には加藤智大元死刑囚=当時(39)=の死刑が執行されたが、被害者の知人は「忘れない努力をしなければならない」と誓う。
事件に巻き込まれ死亡した川口隆裕さん=当時(19)=と中学時代、ハンドボール部の1年先輩だった高崎雅人さん(35)は海外駐在から戻り、3年ぶりに献花した。川口さんとは同じポジションで、部を引退するときには寄せ書きに「また遊びに来てください」とメッセージを寄せてくれた。「犯人のことばかり取り上げられるが、奪われた命に目を向けてほしい」と訴える。
「彼はあの日、現場にいただけで命を絶たれ、自分は漫然と生きている。申し訳なさがある。忘れない努力をしなければと思うんです」。目に涙が光った。
加藤元死刑囚を知る人も現場を訪ねた。大友秀逸さん(46)は平成15年から約2年、仙台市の警備会社で加藤元死刑囚と同僚だった。車やアニメなどの趣味が合い、加藤元死刑囚が会社を辞めた後も電話やメールで連絡を取り合っていたが、事件のおよそ1年前、携帯電話が故障して連絡先のデータが消えてから連絡が途絶えた。「もう少し踏み込んで話ができていたら…」。
今も悔やみ、SNS上で悩みを抱える人の相談に乗り続ける。凶行の現場に立ち、「人を殺そうとするときに、自分の顔が脳裏に浮かんで踏みとどまるきっかけになれば」と願った。
事件は平成20年6月8日午後0時半ごろに発生。加藤元死刑囚がトラックで歩行者天国に突っ込み、通行人をはねた後、近くにいた買い物客らをダガーナイフで襲撃した。
加藤元死刑囚は殺人などの罪で起訴され、27年に最高裁で刑が確定。上告審判決は「没頭していたインターネット掲示板で受けた嫌がらせに怒って犯行に及んだ」と動機を認定した。(内田優作)