「多様性や歴史に思いはせたい」 インドネシアご訪問の陛下

【ジャカルタ=橋本昌宗】国賓としてインドネシアを訪問中の天皇、皇后両陛下は19日、ジャワ島西部のボゴールにある「ボゴール宮殿」を訪れ、ジョコ大統領夫妻との会見や大統領夫妻主催の午餐(ごさん)会(昼食会)など、一連の公式行事に臨まれた。大統領自らが運転するカートで植物園を見学される機会もあった。
同日午前10時前、ボゴール宮殿に到着した両陛下は、大統領夫妻の出迎えを受け、儀仗(ぎじょう)兵らの閲兵などの歓迎行事にご臨席。その後、ジョコ大統領が運転するカートで、宮殿に隣接するボゴール植物園を見学し、色とりどりのランを熱心に観賞された。
園内では、ジョコ大統領が報道陣を前に、両陛下のご訪問を「非常に光栄に思っております」とあいさつ。天皇陛下は紙を持たずに「私たちは貴国の多様性に満ちた社会、文化に理解を深めるとともに、インドネシアの歴史、両国間の友好親善の増進に今まで尽くして来られた方々の歴史にも思いをはせたい」と述べられた。陛下はインドネシア語で「ありがとう」を意味する「テリマカシ」とあいさつを締めくくられた。
陛下は宮殿に戻って大統領と会見し、多くの島で構成されるインドネシアについて、「医療サービスの提供などもご苦労されているのでは」とご質問。また、移動のカートについて「初めて乗って大変面白かった」と述べられた。大統領は「何人かの賓客を案内しましたが、一番緊張しました」と話したという。
皇后さまはイリアナ夫人からインドネシアの文化について説明を受け、実際にろうけつ染めの下絵を描く体験もされたという。両陛下は最後に午餐会に出席し、宮殿を後にされた。
宮内庁によると、当初、午餐会で陛下がお言葉を述べられる方向で調整していたが、「打ち解けた会にしたいので、お言葉の交換はなしとしたい」との提案が大統領側からあったため、お言葉は見送られた。
両陛下は同日夜、宿泊先のホテルで、日本ゆかりのインドネシア人らとご面会。先の大戦の後、インドネシアに残って独立戦争に参加した残留日本兵の子孫らとも言葉を交わされた。