支持率急落、岸田首相「解散ニヤリ顔」に広がる不信 「解散権をもてあそんでいる」と高まる批判

永田町に吹き荒れた解散風は、大詰めになって岸田文雄首相が「今国会での解散は考えていない」と発言し、一気にやんだ。
この間、自民党からは早期解散に期待する声が相次ぎ、メディアも大きく伝えた。風を止めなかった岸田首相には「解散権をもてあそんでいる」との批判が高まり、世論調査の内閣支持率は急落。解散の空回りで政権は一転、深刻な危機に直面している。
長男の秘書官更迭、公明党との対立
5月のG7広島サミット(主要7カ国首脳会議)は、ウクライナのゼレンスキー大統領が出席するなど岸田首相は外交成果を上げた。内閣支持率も上昇し、岸田氏にとって、6月21日までの通常国会中の衆院解散・総選挙に向けたチャンス到来と見えた。
しかし、その勢いは長続きしなかった。首席秘書官を務める長男・翔太郎氏が首相公邸で悪ふざけをしていた写真が週刊誌に暴露され、岸田首相は首席秘書官更迭を余儀なくされた。
追い打ちをかけるように、衆院の選挙区をめぐる公明党との公認調整がこじれる。定数是正に伴い東京で新設される選挙区で、公明党が公認候補の擁立をめざしたのに対して自民党が拒否。
公明党は態度を硬化させ、東京都では自民党の衆院選候補を推薦しない方針を打ち出した。公明党とその支持母体の創価学会の支援が得られなければ、自民党の苦戦は必至。自民党内に動揺が広がった。
一方で、公明党が公認調整で抵抗した本音には「早期解散阻止」の狙いもあった。公明党・創価学会は4月の統一地方選で選挙運動を全国で展開。巨大組織の創価学会の態勢を衆院選モードに切り替えるには時間がかかるため、6~7月の解散・総選挙は好ましくないのだ。
安倍晋三政権では、当時の菅義偉官房長官が創価学会の佐藤浩副会長らと連携。解散の時期などについても創価学会側の意向を尊重してきた。岸田政権では松野博一官房長官や茂木敏充自民党幹事長が創価学会とのパイプ役を担うことはなく、解散時期をめぐる意思疎通も進んでいないという。
マイナンバーをめぐる混乱も加わった。健康保険証との統合や金融機関の口座のひもづけで、他人の保険証や口座につながるなどのトラブルが相次ぎ、利用者の不安が広がった。政府は今秋までに総点検を進めることを約束せざるをえない事態となった。
広島サミットの勢いで早期解散の可能性を探っていた岸田首相も、6月初旬には解散見送りに傾いていた。
「解散近し」次々と伝えられた自民党議員の発言
だが、多くの自民党衆院議員の心理は違った。